放送事故 / ネットに広がる闇と真実①
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最終更新日:2014/10/01
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■例えばこんなお話
ある田舎の町で、1人の少女がいました。そうでね……仮に彼女をカミュちゃんとしましょう。
カミュちゃんはいつも一緒に遊んでいる男の子と公園に出かけました。
カミュちゃんはもう6歳になります。
最近はどんどんおませになって、帰るのも日毎遅くなりお母さんはずいぶんと心配していました。
「今日は一段と遅いわね。そろそろきつーいカミナリを落とさなきゃかしら……?」
それまではいくら遅くとも暗くなる前には帰ったカミュちゃんが、その日は暗くなっても帰ってきません。
夕食が出来上がっても帰ってこないカミュちゃんがさすがに心配極まりお母さんは一緒に遊んでいた男の子の家に電話をしました。
「カミュちゃんは僕と一緒に砂場で遊んでいたよ。でも僕が滑り台に行こうと誘うとカミュちゃんは砂場で遊ぶと言ってきてくれなかった。僕がひとりで砂場で遊んでいるとカミュちゃんいつのまにかいなくなっていたから、先に帰ったんだと思ってた」
無邪気に男の子はお母さんにそう言い、カミュと一緒ではないという事実を告げたのです。
お母さんはすぐに警察に電話。
警察もすぐに動いてくれ、相当数の人数を動員して捜索する事態へと発展しました。
ですがカミュちゃんは見つかりませんでした。
カミュちゃんの失踪から数週間が経ち、数か月が経ち、一年が経った頃ついに警察の捜索は打ち切られることになりました。
警察の人は思いつめた顔で意を決し、失踪から一年が経っても今だ憔悴した様子のお母さんにこう言うのです。
「もしかしたら……カミュちゃんは死亡している可能性が高い。今後も情報協力を呼びかけ全力を尽くしますが、念のためお伝えしておきます」
さらに数年が経ち、誰もがカミュちゃんを忘れ去ろうとした頃、あるテレビ番組の企画にカミュちゃんのお母さんが出演しました。
その番組には高名な霊能者が出演し、その霊能者が能力を駆使して未解決犯罪の真相を究明するといった内容でした。
そう、カミュちゃんのお母さんは諦めていませんでした。
捜査が打ち切られても、藁にも縋る思いでこの番組に依頼したのです。
「娘は……カミュは……今一体どこにいるのですか」
お母さんは霊能者に対しカミュちゃんが『生きているのか』とは聞きませんでした。
なぜならば彼女は今もカミュちゃんが生きていると信じていたからです。
霊能者はしばらく瞑想のような動作に入り沈黙を続けると、目を見開き何かが見えたことを伝えました。
「……分かりました」
息を飲みお母さんは、「カミュは……元気なのですか……?」
「カミュちゃんは……」
少し目を逸らし霊能者はこの次の言葉を呑み込もうか吐き出そうか悩みました。
ですが、何かを決心したのか再びお母さんの目を見詰めると
「カミュちゃんの目は、この世界の色々な物を見詰めています。そして、裕福な暮らしもしています。彼女の胃袋にはおいしい料理が毎日入り、肺は綺麗な空気を沢山吸い、そして吐き出していますよ」
それを聞いたお母さんは歓喜に喜びました。
「じゃ、じゃあ……カミュはやっぱり生きているのですね!? よかった……本当に良かった……。
それで……カミュはどこに? どこに行けば会えるのですか!」
真っ直ぐ彼女を見ながら霊能者は優しく笑うこともせず、真顔のまましっかりと一言一言を大事にして言いました。
「生きています。ですがそれは肉体的にという意味です。彼女の魂に会うことはもうできません……」
霊能者の言っている意味が解らずに気持ちばかりが焦るお母さんは、霊能者にすがりつき泣きながら訴えました。
「あの子に会わせてください! どんな姿でも、どんなに変わってしまっていても、あの子は私の娘なんです! ……どうか……どうか、どこにいるのかを教えてください!」
懇願するお母さんを困った顔で見下し、肩に手を乗せると霊能者は
「カミュちゃんの欠片にいくら会いに行っても、カミュちゃん全てには会いに行けません。わかってください」
「……なにを言ってるんです?」
霊能者の語る意味不明な言葉に錯乱していた彼女も表情に疑問符を浮かべた。
「カミュちゃんは世界中の色々なところにいるのですよ……」
「は……?」
「カミュちゃんの【目】は、色々な景色を見ています。カミュちゃんの【胃袋】にはおいしい食べ物がいっぱいに詰まっています。カミュちゃんの【肺】は綺麗な空気をたくさん吸って、カミュちゃんの【心臓】は血液を体内に送っています……。ですが、カミュちゃんの魂だけはもうどこにありません」
霊能者は余程気の毒に思ったのか、直接的な言葉でお母さんにその残酷な事実を伝えませんでした。
少し間を置いて、その残酷な事実へと辿り着いたお母さんは絶叫と共に卒倒し、スタッフによって連れて行かれました。
「真実を知るということは、リスクを知るということです。真実だけが正しいと誰が決めたのでしょう。嘘が真実に勝つこともあるのです。その嘘が、その人にとっての真実になれば……」
■真実の信憑性
こんな締めくくりの言葉があったのか、それともなかったのか。
ともかく、ネットに広がる恐ろしい話のひとつです。
放送事故などのワードで検索すると高確率でヒットする有名なお話ですが、少々最東対ストに脚色させてもらいました。
これはある国で実際に起こったことだと噂されていますが……実際どうなんでしょうね。
ある情報筋によると、例えばアメリカ。
アメリカでは年間死亡者(事故・自殺・他殺含め)は7万人を超えるそうですが、失踪者数はその数倍とも言われいます。
お分かりでしょうか。
その広大な国土故、見つからず死者ではなく失踪者と記録されている人間がさらに数十万人存在することになります。
近年、自殺者が交通事故で死亡する人間の数を超え、更に銃犯罪で死亡する事件がその数をまた超え、死のスパイラルが拡大するのが止まらない。
その中で語られるこのまことしやかな都市伝説も、もしかしたら真実や嘘を超越した、世間を強烈に風刺したものなのかも知れません。
でもね、皆さん。誰が犠牲になっても子供だけは巻き込んではダメです。絶対に。
と、まあ今回はここまで……あ、そうそう遅れましたが、どうも最東です。
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