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木屋町エレジー(第二回ショートショートバトル)





第一回ショートショートバトルの様子はこちら




■前回までのあらすじ




ペニーワイザーゆたか







ペニY蔵







ペニ蔵







PEZ(ペッツ)←NEW!




■哀・戦士~激闘・再び~




「やめろ! 今出ても犬死だぞ!」




「止めても無駄ですよ。この宙域でアルタイル武装を持っているのはこの艦……いや、僕の“SO_01”だけなんです!」




「だが向こうはアルタイル武装を標準装備しているうえにAIによる自動操縦だ。敵機に対して同情の余地などない……気を抜かなくともランチから飛び出した瞬間に撃墜される!」




「僕が出なくたってこの艦ごと墜とされますよ! ……だったら」




「なにを考えているココノエ!」




「……ベース23に帰ったら、みんなに伝えてください。僕は“SO_01”と星空のランデブーに洒落こんだってね」




「出るな! おい、管制! ハッチを開けるな、ココノエを出すな!」




テツヤ艦長の制止を聞かず、ココノエはアルタイル武装装備型ロイド強襲KAWAGOEロイド“SO_01”で銀河の星屑の光の中へと駆っていった。




飛行機雲のようなバーニアの余韻が、乗組員たちが見ている前で消えてゆく。




『まもなくパームトーン宙域です。ココノエさん』




「ありがとうトモコさん。もう自動ナビゲーションに切り替えていいよ」




『でも……ココノエさん』




「いいんだ」




『わたしたちに、さよならも言わないつもりですか』




「ああ……そっか。そうだね」




『嘘です。いじわるを言ったんです。腹が立ったなら……帰還して思う存分罵ってください』




無言でいたココノエの心中を察したように、トモコは「みんな、待っていますから」とだけ残し、回線を自動ナビゲーションに切り替えた。すかさずココノエは自動ナビゲーションを固定に設定する。




そうすることでココノエが解除しない限り、管制側から回線を開くことは不可能になる。




事実上の孤立。それはココノエの強い意志の表れでもあった。




「静かだなぁ。まるで夜の中に放り出されたみたいだ。……そっか、そういえば夜の中と一緒だ。でも」




SO_01の周囲には無数の宇宙ゴミや朽ち果てたロイド、兵器の破片が漂泊している。全方位モニターが視覚感度を上げているため、光彩がはっきりと視認できる。




細かなものまではっきりと見え、目を凝らせばコックピットで死んでいるパイロットの姿ですら認めることができた。




この宙域はたびたび戦場となった。毎度、激闘に次ぐ激闘で宇宙ゴミは増えるばかり。それなのに賑やかになるどころか、その場にいるものにより深く死を感じさせる。




――敵のロイド軍はどこだ。




ココノエはサーチ感度を最大にしつつ、肉眼でも敵の姿を捉えないかと集中する。




サーチ機能は便利だが、こちらからも電波を発信してしまう欠点があった。




普段の作戦中ではサーチ感度を中よりも下げることを徹底づけられていたが、むしろ敵に見つかることは好都合だったココノエは、射程外からのビーム攻撃だけに気を付けながら敵の姿を探す。




『エマージェンシー、識別外のロイドの反応があります。機体の反応6』




「6? 少ないな」




『熱波、衝撃反応検知しました。戦闘中であると予想されます』




「戦闘中だと!?」




■刻をこえて~うっちゃり戦法vsエリート精鋭~




『識別コードはI.Ma.Muが3。RYU-1が3』




なんということだ。ココノエはひとりのコクピットで叫び、コンパネを叩いた。




I.Ma.Mu(イマム)隊は通称ZONBIEと呼ばれる地球を追われた異星人と地球人のハーフで構成された施設軍の精鋭部隊。機体はどれも個性的でパイロットも想像がつく。アキとPEZだろう。撃墜数は央國軍のエースパイロットであるRYU-1にも迫る。




これはたかだか2千の兵力と800のロイドしか持たない小さな機兵軍では通常考えられない異常な数だった。




一方のRYU-1の撃墜数も他の兵とは頭一つ抜きんでていて、他の追随を許さない。




特に彼は『戦艦墜とし』の異名も持っていて、重機甲型ロイドは操作性もさることながらその機動力の低さから好んで駆る者はRYU-1以外にいない。




「そして、その傘持ちにはノベノとエン・ジョージか……」




これ以上にない布陣。もともとRYU-1は小隊を率いらないで戦場に挑むことで有名だった。




大群同士がくんずほぐれつの戦火の中で、たった3機で行動している力士のような風貌の機体を見つければどんなに呑気な者でもバーニアをフル出力で逃げ出すという。




「なぜ、そんな奴らがこんなところで戦っているんだ……!?」




~~~




「ははあっ! ZONBIEはゾンビらしく死んでろ!」




RYU-1の両肩に換装された44連荘ナパームランチャーを一斉射出する。




それを流麗な動きで回避動作を行いつつ時折撃ち落とすイマム機。




「野郎、ZONBIEを舐めんな!」




「くくく、ちょっと落ち着いてくださいよぉ~アキさぁん~くっくく。ねぇ、イマム隊長?」




「そうだ。頭に血を昇らせていてはいくらアルタイルドライブを搭載していても撃墜されるぞ」




「るせぇ! 俺らはZONBIE。階級のないフリーダムの私設軍だ! 命令する権限はてめぇにはねえぞイマム!」




「撃墜数に天地ほどの差がありますがねぇ~クックック」




「よそ見するな」




ミサイルの雨の中、一発たりとも当たらない3機のロイドはそんな最中でも反撃の隙を窺っている。この周到さが彼らを最強と言わしめている所以でもあった。




「大佐ァ! 勘弁してくださいよ! 小生は野球肘で上がんないんですから、ハンドル動かすだけで痛いんだからぁ」




「……うん。関係、ないな。それ」




「ノベェノ~~、そんなのんびりさんだとすぐに死ぬよ~この戦場じゃあ」




「はっはっはっ! 心配しなくともよい! わかっておろおが、ノベノはしゃべりはのんびりだが、迎撃プロテクトの演算能力は誰にも勝てん!」




イマムたちの機体からお返しとばかりに流星のようなビーム群が降り注ぐ。ZONBIEが開発・独占している超広角同時補足兵器『ニャアンレイン』である。




RYU-1とエン・ジョージがノベノの機体の後ろにさがり、ニャアンレインの前に出た。




「ニャアンレインの前に丸腰で出てくるなんざぁ正気の沙汰じゃねえぞ! 自殺する気かあの機体!」




「……違う」




ノベノ機のコックピットでは別モニターを3つ同時展開させたノベノが超高速でなにかを入力している。モニターでは次々と「OK」と「CLEAR」が表示されてゆき、やがてモニター上で『AROUND 40 SSS』が承認された。




「……アラフォーSSSユニット、展開します」




ノベノがそう告げたのと同時に蜘蛛の巣のような六角形のマス目上の電子網が彼らの前方一面に広がった。




「っひょう! いつ見ても爽快だねぇ!」




エン・ジョージが口笛を鳴らし讃えると、ニャアンレインは全てネットに吸い込まれ、消滅した。




「じゃあ、こっちからお返しってことで♪」




エン・ジョージが野球肘だと言っていた腕でハンドルを握り、親指でカバーは弾き露出したボタンを押し込んだ。




「凍て死にやがれェ!『キス・マギカ』!!」




とめどなく降り注ぐニャアンレインを覆うようにしてエン・ジョージ機から眩い光が放射される。ニャアンレインは一瞬にして消滅し、粒子状になったニャアンレインが氷の弾丸となってZONBIEの機体に襲いかかった。




「あわわ、イマム隊長~!」




「焦るな。アキ、頼む」




「ちっ! 命令じゃなく頼まれごとならしゃーねえ。聞いてやるよ、ダチの頼みをよぉ~!」




『ANO×3(アノ・バイ・スリー)ドライブ起動』




「あの日!」瞬時に消え、イマム機に触れ更に消える。




「あの時!」さらに現れ、PEZ機を回収。消える。




「あの場所……DEAD!」




3機の機体がノベノのネットの内側から出現し、ビーム粒子で周囲をコーティングしたまま渦を巻きながら突進する。




その様はまさに彗星、そのものだった。




「な……なぁにぃいいいいいいい!」




■完




という感じで行われた京都パームトーン『第二回ショートショートバトル』。




今回もnoteと動画配信、どちらとも見ごたえがあるので見ちゃいなよ!




関東でもやる計画があるらしいです。これを機にいつか本当の意味での『西対東』が実現するといいですねー。







各チームの原稿はこちら→第二回ショートショートバトル




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