ホラー小説 めろん-7 / 無料ブログ小説
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めろん。
近所のスーパーで玉緒は今夜の献立を考えていた。
『本日のお買い得はメロン一匹98円、メロン100g200円と、大変お得なメロンとなっております』
スーパーの店内放送ですら【メロン】まみれになっている。
このままではメロンノイローゼになりそうだ。
「奥さん、メロンどうだい! おいいしいメロンだよ!」
またメロン!? と思い振りかえるとそこには本物のメロンが陳列されていた。
どうやら特産コーナーで特別に売りに来ている様子だった。
「どうだね、あまくておいしいよ! この値段では絶対ないから!」
そう言われると主婦は弱い。それにメロンメロンと幻聴が聞こえるのはもしかしたら『メロンが食べたい』という自分でも気付かなかった欲求の現れなのかも知れない、と思った。
「そうね。……じゃあ、ひとつください」
玉緒はメロンを買って帰ることにした。
「メロン」
「メロン」
「メロン」
帰り途の最中、知り合いに会う度に声をかけたれたが、既にかけられる言葉は「メロン」しか聞こえなくなった。
(もう大分と末期ね)
”メロン”としか聞き取れないが彼女は声をかけてくる人々に一人一人ちゃんと返事をした。
だが、何故か返事をする度に相手はおかしな顔で玉緒を見た。
(メロンしか言えないくせに生意気ね)
当然、玉緒もいい気分であるはずがない。
(それにしてもお腹が減ったわ)
それまでの食欲不振が嘘のように玉緒は急な空腹に見舞われた。
(お腹減った……)
相変わらず、近所の連中はメロンメロンうるさい。
(ほんっとにあまくておいしそうなメロンね!)
玉緒の思考がこの時点でずれ初めているのに彼女は気付かない。
「はあっ、よだれが出るわ」
すれ違う人間が次第にとても美味しそうに見えてきた。
「早く帰って食べなきゃ」
彼女が声に出してそう言った時、丁度1人の若者がすれ違った。彼はギョっとした顔で玉緒を一度見ると足早に去った。
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