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ホラー小説 / デザイナーのお仕事②

公開日: : 最終更新日:2015/02/15 ショート連載, ホラーについて

デザイナーのお仕事

デザイナーのお仕事②

 

 

 

■増えてきた仕事と……

 

 

フリーを名乗るようになって、HPを立ち上げ、ようやく3カ月ほどが経った。

 

 

一時は食うことすらも心配したが3カ月目でようやくチョコチョコと依頼が集まり、なんとかなりそうな予感がしてきた。

 

 

だけども相変わらず来る仕事は写真編集のものが圧倒的に多い。

 

 

四の五の言ってはいられない。なぁに、名が通って他の依頼が来るようになればやんわりと減らしていけばいいさ。

 

 

それまではなんとか耐えながら写真加工の仕事もこなしていかなくては。

 

 

「ん、またか」

 

 

赤い人影。

 

 

もうすっかり慣れてしまった。今では3毎日枚はこの影が写り込んでいる。

 

 

最初の頃に一度赤い人影が消えていないとクライアントからクレームがあったが、それ以降はクレームは上がっていない。

 

 

それどころかリピーターとして再度仕事を依頼してくれる。有難い限りだ。

 

 

最初の内はこの赤い影が気持ち悪いと思っていたが、来る案件来る案件、高確率でこの赤い人間が写り込んでいると、もしかしたら全国的な流行なのかもしれないと思うようになってきた。

 

 

しかもほとんどのケースで、この赤い人間に対しての指示はない。

 

 

そういうわけで俺は赤い人間が写っている時はボランティアで消しているのだ。

 

 

人間、習慣と言うのは恐ろしいものだ。

 

 

そんな毎日の中で、俺もすっかりその写真の影に慣れてしまったのだ。

 

 

 

■消しても消しても送られてくる

 

 

 

赤い人影だが、ここ最近妙にはっきりと映ってきている気がする。

 

 

まさかそんなはずはないと思いつつも、映った写真が来るたびに消しているんだが……。

 

 

最初は【人のような形をした赤い影】だったのが、今でははっきりと【赤い女】であることが分かる。

 

 

さすがに顔の表情までは見えないが……でもそれが見えるほどになるのも時間の問題ではないかと思えてくる。

 

 

そんな有り得ないことを想うある日のことだ。

 

 

俺はたまには休日に友人たちと集い、バーベキューでもしようという話になった。

 

 

大きなキャンピングカーをレンタルし、川のほとりでバーベキューを楽しむ。

 

 

その日はキャンピングカーの中やテントで雑魚寝をして泊まろうということでみんな量を気にせずしこたま飲んだ。

 

 

ビールにワイン、焼酎カクテル……。

 

 

誰がこんなにも酒ばかり持ってきたのかと呆れるほどの種類が揃っていた。

 

 

普段は寝酒程度にしか酒を入れない俺もこの日は大いに飲み、大いに笑った。

 

 

この日を思い出にと、写真も取りあった。

 

 

友人たちはそれを今度カレンダーかなにかにして送ってくれと俺に頼んだ。

 

 

「料金払うなら喜んでするぜ」

 

 

「おーおー怖いねー金の亡者は! ダチから金とるかフツー」

 

 

この日は最高の日だった。

 

 

静かすぎて騒がしいほどの緑に囲まれ、幾千の星々に見下されながら眠った。

 

 

そんな楽しいはひと時は一瞬で過ぎ、すぐにいつもの日常が戻ってきた。

 

 

俺はついさっきのことのように楽しい思い出を振り返りながらいつも通りの仕事に向かう。

 

 

「……ん?」

 

 

赤い女。まただ……。折角の楽しい思い出を邪魔してくれる。

 

 

俺は赤い女が写っていない周りの景色の色を持ってきながら赤い女を景色から決してゆく。

 

 

「……よし、と」

 

 

きれいさっぱりに消え去った写真に満足すると次の写真を封から出した。

 

 

「え」

 

 

また赤い女が写り込んでいる。何の変哲もない海での一幕。ビーチバレーに熱くなる若者たちの後ろ、海から上がってきたかのように赤い女が膝から下を海に漬けこちらをじっと伺っているようだ。

 

 

「今回のはでかいな……」

 

 

俺は呟きながら大きく写り込んだ赤い女を消す。

 

 

すこし画素が粗くなったところがあるが、こんなにも大きいものを消してこの程度ならば及第点だと褒めてもらいたいものだ。

 

 

「よし、次!」

 

 

次の案件を取り出す。封筒からスライドして取り出した写真。新居を写した記念写真の二階の窓。

 

 

「赤い女……」

 

 

どくんと一度、心臓が激しく打った。急な胸の衝撃に少し息苦しさを感じながら修正は始める。

 

 

……偶然、今日は多かっただけだよ。

 

 

自分に言い聞かせるも既に虚しい。

 

 

もしもこれで次の写真にも写っていたら……。

 

 

 

■赤い女

 

 

 

次の写真を取り出す……。

 

 

赤い女は写っていなかった。

 

 

「ふぅ……、やっぱりそうだよな。偶然とはいえ連発でくるとさすがに……」

 

 

俺は依頼を受けた案件の写真は先にプリントアウトをしておいてから作業にかかる。

 

 

プリントアウトする時は流れ作業のように無心でこなしているのでこの時点であまり案件の写真をまじまじと見ることはない。

 

 

編集作業に移るときには初めてちゃんと見る。だからこうやって一度写真を見てからデートを画面に出すのだ。

 

 

4枚目にしてようやく赤い女の連続登場記録が止まったのに安心して、俺は編集ソフトで画像を呼び出した。

 

 

「うわあっ!」

 

 

顔のアップ。真っ赤な顔の髪が長い女。目と口の位置にはただ黒く丸い穴が空いているだけ。

 

 

写真に写っていなかったので油断していた俺はもろにぱそこんのディスプレイに写ったそれに腰を抜かしてしまった。

 

 

パソコンの画面を消そうと顔を逸らしてキーボードのパワーボタンを手でまさぐる。

 

 

今にも画面から赤い女が手を伸ばしてくるのではないかと、恐怖で生きた心地がしなかった。

 

 

パチ

 

 

電源ボタンを切る音。

 

 

恐る恐る画面を見ると……。

 

 

「ああああ!!」

 

 

画面が消え真っ暗になったディスプレイに赤い女だけが焼き付いたように映っている。

 

 

流石に有り得ないこの状況に俺は部屋を逃げ出した。

 

 

 

■電話

 

 

 

砕けた腰を庇い犬のように四つん這いになって部屋を逃げ出す。

 

 

誰かが追ってくる様子は無かったが一刻も早くあの部屋から出たかった。

 

 

玄関の前まで逃げ込むと俺はいつでも外に逃げられるように靴を一足手に持ち、ノブを掴もうとする。

 

 

『♪』

 

 

その時電話の着信メロディが鳴った。

 

 

誰かは分からないが、今の腰の抜けた俺では満足に走れもしない。なんとか自力で外に出るとして、誰かに迎えに来てもらいたかった俺は、その電話の主に助けを求めようと画面を見た。

 

 

「……!?」

 

 

番号は知らない番号だった。だが、何故か設定もしていないのに着信の画像がこの間行ったバーベキューの写真になっている。

 

 

『♪』

 

 

早く出ろと言わんばかりに鳴り続ける着信。そしてみんなで川のほとりで集合したにこやかな景色の端から赤い点が目に入った。

 

 

赤い点は画面の中からどんどんと近づいてゆき、それに比例して姿大きく鳴ってゆく。

 

 

俺は余りの恐怖に身体が硬直してしまい動けなかった。

 

 

赤い女はスマホの画面越しに俺に近づいてくるとついにドアップになり手を伸ばしてきた。

 

 

「ひぃぃいいいいい」

 

 

その手は俺を掴むのではなく、画面下に表示された通話ボタンにタッチをし、手をまた画面の中へと戻した。

 

 

「……へ?」

 

 

意外な行動に恐怖の中でもほんの少し間が空く。そして、通話中になったスマホから……

 

 

「なんでいつも消すの? そんなに私を消したいの? だったら私と一緒に消えようよ」

 

 

玄関を背に腰を抜かしたままの俺に、パソコンの部屋から、トイレから、キッチンから、靴箱から一斉に赤い女が現れ、同時に俺に向かって歩み寄ってくる。

 

 

「次は誰が消える番?」

 

 

 

 


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