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特選怪談 / 怪奇夜話

公開日: : おもうこと, ホラーについて

 

怪談

 

 

■夏がやってきました

 

 

 

どうも最東です。

 

 

当ブログでは時折、ネットやテレビ、雑誌などで仕入れた怪談などを紹介しています。

 

 

大体がネタに困ったときに投入する……、面白い・怖い怪談を見かけたときに紹介しようと思っていまして今年も夏間近(執筆時2016年7月)ということで、厳選した怪談をご紹介しようと思います。

 

 

 

■怪談・カウントダウン

 

 

 

とあるマンションの一室に、友人が引っ越したという。

 

 

これまでは狭いワンルームに住んでいた友人だったが、今回の物件はどうやらその時のものとは大きくランクアップしたとのこと。

 

 

聞けば、掘り出し物の物件で広さは前の部屋の2倍近くになり、駅も近い。なのに家賃は前よりも安いというのだ。

 

 

まあ……聞くからにいわくつき、のような気もするが正直そんなものは住んでみれば気にならないのだろう。

 

 

有頂天ではしゃぐ本人を前にそんなことも言えず、僕は素直にお祝いをした。

 

 

彼が引っ越してしばらくした頃、広い部屋は毎夜のように仲間たちの溜まり場のようになった。

 

 

酒を飲んでは馬鹿話に華を咲かしたり、みんなでテレビゲームをして盛り上がる。

 

 

そんな毎日を過ごしていたという。

 

 

特に週末ともなれば彼の部屋はどんちゃん騒ぎだ。

 

 

ご近所からの苦情もすごいだろうと思っていれば、本人曰く一度も苦情はないそうだ。

 

 

そんな日々が続いていたとある日のことだ。

 

 

いつものように仲間たちと彼の部屋で飲もう、という話で僕は呼ばれていた。

 

 

その日集まるのは大体7~8人くらいだと聞いていた。

 

 

その中に僕と同じくらいにバイトが終わるという奴がいたので、そいつと一緒に彼の部屋へ行くことになった。

 

 

そいつは、今回彼の部屋に行くのは初めてだったらしく、僕と待ち合わせをして一緒に行くことにした。

 

 

「あ……」

 

 

マンションが目の前に見えてくると、そいつは小さく呟いた。

 

 

「どうした?」

 

 

「もしかして、あいつの部屋ってあのマンション?」

 

 

僕がそうだ、と答えるとそいつは露骨に表情を曇らせた。

 

 

「ちょっと……俺、あそこには行きたくないな」

 

 

あそこには行きたくない? いったい何を言っているのだと思い、僕は聞き返した。

 

 

「行きたくない、ってどういうこと? あそこのマンション知ってるの?」

 

 

「いや、初めて来たんだけど。なんていうか、嫌な気がするんだよね」

 

 

「嫌な気?」

 

 

よくよく聞いてみると、どうやらそいつは【霊感】というものがあるらしい。

 

 

僕自身、【霊感】とかいうものを持っている奴と初めて出会ったし、というかそいつが霊感があるなんてその時初めて知った。

 

 

「ええ、そんなこと言わずに行こうよ。お前連れてくるって言っちゃったし、みんな待ってるからさ」

 

 

「……うん」

 

 

露骨に行きたくなさそうな顔のそいつをなんとか言いくるめ、僕たちはマンションへと入った。

 

 

 

■この部屋はなにかがある

 

 

 

マンションのエントランスを過ぎて、そいつは再度「やっぱり行きたくない」と言った。

 

 

こんなところまで来て帰らせるものかと思った僕は、さっきと同じく彼を宥め説得をし、嫌がっているのをやや強引にエレベーターに乗せた。

 

 

いくらマンションに嫌な気が立ち込めているからといって、それが例の部屋であるとは限らない。

 

 

入ってみんなと会えばきっと嫌な気分も飛ぶのだろう。

 

 

僕はそう思っていた。

 

 

内心では少し、『幽霊が視えるなんて……』と高をくくっていたのかもしれない。

 

 

エレベーターが部屋のある階に止まりドアが開く。

 

 

そいつの背中を押して降りた際、ちらりと横目で顔を見てみると涙目になっていた。

 

 

「なぁ、もしかしてさ。あいつの部屋ってあそこの二番目んところか?」

 

 

初めて来たはずのそいつが、不思議な事に今から行く部屋を言い当てた。

 

 

驚いた僕は「よくわかったな。なんでだ」と聞く。

 

 

「……」

 

 

聞いてから「しまった」と思った。

 

 

一応、部屋の前までは来たがそいつは血の気が引いた真っ青な顔で脂汗をかいていた。

 

 

「やっぱ無理だわ。この部屋だけは絶対に無理」

 

 

そいつの顔を見て尋常じゃないことはわかった。だけど、部屋の前まで来て帰られたとあっちゃ僕の立つ瀬がない。

 

 

「わかった。じゃあ、ちょっとだけ……一時間くらいいたら、急用だとかなんとか言って帰ればいいじゃん。そんときは僕も手を貸すからさ。それならいいだろ? な、ちょっとだけ」

 

 

彼も彼で必死だが、僕も僕で必死だった。

 

 

それを察してくれたのか、渋々といった様子で「じゃあ、ちょっとだけ……」と言ってくれた。

 

 

 

■2分で帰った友人

 

 

 

ドアを開けると、土間にははみ出さんばかりの靴があふれていた。

 

 

部屋に入らずとも中でみんな盛り上がっているのが、視覚的にも一目瞭然だ。

 

 

目で見た光景よりも少し遅れて、ぎゃはははっ! という馬鹿笑いが聞こえる。

 

 

「ほら、みんな盛り上がってるぜ」

 

 

あれだけ騒いでる中にいけば、体調も治るだろう。

 

 

僕はそんな風に思っていた。

 

 

「おーきたかー! 入れ入れ!」

 

 

部屋には思った通り5人ほどが缶チューハイやビールを床に置き、レースゲームで盛り上がっている。

 

 

部屋中煙草の煙と、男だらけの熱気でなんとも言えない空気になっていた。

 

 

確かに居心地はあまりよくないが、霊が出そうだとかそんな様子はみじんも感じない。

 

 

やはり彼の杞憂であったのでは、と僕はひとり安堵していた。

 

 

そう思って部屋に入るのを渋っていたそいつを見ると、背を丸めて俯き自分の膝を凝視している。

 

 

彼のそんな様子に気づいていたのは僕だけのようで、他の連中は相変わらず騒いでゲームに夢中だ。

 

 

「おい、大丈夫か……」

 

 

僕がそいつにそう声をかけた直後だった。

 

 

「悪い、俺帰るわ」

 

 

「え?」

 

 

急に立ち上がったそいつは、俯き下を見たまま汗でシャツの首元をぐっしょりと濡らしていた。

 

 

そして、足早に玄関へ行くと靴もちゃんと履かずにかかとを踏んで出て行ってしまった。

 

 

「お、おい!」

 

 

追いかけようと思ったが、場がこれ以上白けるのも悪いと思った僕は、なんとかその場に留まった。

 

 

「なんだよあいつ」

「帰ることないじゃんか」

「なんか怒ってた?」

 

 

みんな口々に、突然帰った彼に対し不満を漏らす。

 

 

僕も一時間は我慢しろと言った手前、二分も経たないうちに出て行ってしまった彼に憤りを感じていた。

 

 

 

■後日

 

 

 

その出来事より数日後、別の用事で彼と会う機会があった。

 

 

丁度いい機会だったので、僕はひとこと言ってやろうと彼を問い詰めた。

 

 

「いくらなんでもあんなに早く帰ることないだろ。しかもなにも言わずに……。一体なんなんだよ。なにがあったんだって」

 

 

少し刺々しく荒ぶった口調で迫った僕に、彼は一言目に「ごめん」と素直に謝った。

 

 

謝ったうえで彼はこう続けたのだ。

 

 

「あの時、お前に言われたように一時間くらいはなんとか我慢してみようって思ったんだ。みんなにも悪いし。だけど、霊がいるっていうすごく嫌な気分だけはどうしても取れなくて……。

 

 

なにか気を紛らわせようとテレビの画面を見ようと思ったら、みんな盛り上がっててテレビに寄ってたからさ、全然見えなくて。

 

 

しかたなく、他に気を紛らわせるものがないかなって思って部屋を見回したんだ。

 

 

そしたら、野球選手のポスターがテレビの右側の壁に貼ってあったろ?」

 

 

そうだったっけな、と思い浮かべながら僕は相槌を打った。

 

 

「そのポスターのさ、右上がテープがはがれてだらんとめくれてたんだ。なんとなくそれを見てたらめくれたポスターから真っ白い手がにょきって垂れてきて……。

 

 

思わず「うわっ!」ってなってさ、目を逸らさなきゃだめだって思って今度はテレビの左側にあったらCDラックに目を移した。

 

 

そしたらそこからも手が出てて……。

 

 

壁がダメならテレビしかない、ってみんなが注目しているテレビを見ると、みんなが見ている目の前でまた手が垂れてた」

 

 

信じられない話だった。

 

 

ポスターとCDラックはわからないにせよ、テレビに関しては僕も含めてみんな見ていた。

 

 

そんなテレビに手がぶら下がっていたなんて……

 

 

「それでいてもたってもいられなくて帰ったのか……」

 

 

それでも彼の言っていることをイメージするだけで、身の毛もよだつ。もし本当に彼だけに見えていたとするのならば、そこから一刻も早く離れたいというのも分かる気がした。

 

 

「それだけじゃないんだよ」

 

 

「……え」

 

 

「ポスターから垂れていた手はパーの形だった。次にCDラックから垂れていたのはパーの形から親指を折った形で、そしてテレビから垂れていたのは三本指を立てていたんだよ」

 

 

「……?」

 

 

「わからないのかよ! 最初が五本指で『5』、次が『4』、そして『3』! カウントダウンされてんだよ!」

 

 

「あっ……!!」

 

 

僕は絶句した。

 

 

もはや信じられないとか、気持ちがわかるとかそういうレベルのものではなかった。

 

 

おそらく、このときの僕は部屋を出て行った時の彼と同じ、真っ青な顔いろだったのだと思う。

 

 

「あそこにいた【ナニカ】は、俺が来るのを待ってたんだ。もしもあの数字が『0』までいったら……。そう思ったら俺はなにも見れなくなった。

 

 

だから何も見ないようにして帰ったんだ!」

 

 

 

 

 

――結局のところ、『もしもカウントダウンがゼロまでいったらどうなるのか』という答えは出なかったが、今もその部屋に友人は住んでいるらしい。

 

 

ただ……前のようにほかの仲間が部屋に遊びに来ることはめっきりなくなったそうだ。

 

 

 

 

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