嗤う旅かつてそこにあった栄華 兵庫神子畑選鉱場 2

怪紀行かつてそこにあった栄華 兵庫神子畑選鉱場 1はこちら
■神子畑交流館 神選にて
交流館の職員でガイドのおばさんはとにかく親切丁寧に神子畑選鉱場のことを説明してくれました。閉館すれすれでやってきた我々に嫌な顔ひとつせず、生き生きとお話してくださる姿がまぶしく、目が溶けるかと思いました。(逆の立場なら最東は露骨に顔に出すこと風のごとし)
話を聞くと、神子畑交流館 神選は2020年にできたばっかりの施設だそうな。なるほど、確かに綺麗な建物だ。交流館内の中央には稼働当時の選鉱場周辺の模型があり、それを指しながら在りし日の栄華について教えてくれました。
軍艦島などでもみられるように、炭鉱場の周辺には従業員たちのための生活区域が設けてあり、住居はもちろんのこと市場や娯楽施設まで包括していました。さながら一個の町であり、従業員とその家族たちはここから外に出る必要さえなかったのです。
交通の便が悪かったことは想像に難しくなく、ひとたび生活用品の買い付けに下山しなければならないとあれば、町を一個まるまる作ってしまったほうが確かに生産的なのかもしれません。
しかし、軍艦島然り、閉山後は無用の長物となりたちまち巨大な廃墟となります。神子畑選鉱場もまたその憂き目に遭った地だったといえるでしょう。ですが鉱山跡というのは、重要な歴史の証人ともなり得ます。それゆえ、形を変えても人の手で守られ続けているのですね。
人は誰しも巨大なものに畏敬の念を抱くものです。神子畑選鉱場もまた、巨大で恐ろしく、荘厳な佇まいで訪ね人を待っているようでした。
話題は神子畑交流館 神選に戻りますが、ここは非常に面白いところでした。
神子畑選鉱場のトレードマークともいえるシックナーをデザインしたトートバック、マグカップをはじめ、Tシャツやクリアファイルなど……なんと神子畑選鉱場グッズが盛りだくさん。
このタイプの要塞廃墟(要塞建築)でグッズ展開しているのははじめて見ました。(最東は味噌買いました。美味しい)
さらに店内にはサイン色紙が飾られており、誰のものか気になって見てみると……
「UVERworldって、知っとる?」
思わず二度聞きしました。
ガイドの方は年配の女性の方だったので、まさかその人の口から「UVERworld」という言葉が出てくるとは思わず驚いてしまったのです。(失礼ながら)
聞き間違いかと思い、色紙を見ると確かにUVERworldと書いてあります。思わず「な、なんで?!」と訊き返しました。
「この春に来たの」
と得意げに話すのを聞いてみると、こういうことのようです。
人気ロックバンド『UVERworld』がMVの撮影でなんとこの神子畑選鉱場を使用したのだそう。その時に残していったのがこの色紙だというのです。思わぬところで思わぬ有名人の痕跡を目の当たりにし、一瞬思考が止まってしまいました。
これだから面白いんですよね、怪奇行は。笑
交流館を出るといよいよ不夜城と呼ばれた選鉱場を撮影しに行きます。
おお、でかい……!!
確かに在りし日の姿からは変わり果てましたが、それでも当時ここで働いていた従業員を思うとその息遣いや脈動を感じることができました。
昭和の時代、ひとつの町を作り上げてまで稼働していた神子畑選鉱場。シックナーがなんの装置なのかは全然わかりませんでしたが(調べろ)、その巨大さを前にすると胃が縮み上がる思いでした。
人が作り上げる巨大なものは、神仏に限らずどこか怪物じみた迫力があります。
かつて24時間休まず稼働していた面影を残し、いまは静かに訪問客を待っている。その姿は、他の廃墟や炭鉱跡と違いどこか安らかな雰囲気さえ感じました。
特有の寂しさがなく、有志に守られている。そんな安心感から穏やかさを感じるのでしょうか。ともかくとして、一見の価値は十二分にある施設でした。
ただし、今回は致命的に時間が足りず、悔いが残る訪問になったのでいつかまた再訪したいと思います。
※神子畑交流館に隣接している施設はムーセ旧居(旧神子畑鉱山事務舎)といい、後で調べてみると同じ兵庫県にある生野鉱山の開発に貢献したフランス人技師ムーセ氏の元住居のようでした。明治20年、神子畑に移築され現在は「ムーセハウス写真館」として公開されている模様。最東が訪問した時は残念ながら営業時間外で中を見られませんでした。今度は早い時間に再訪したい。
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