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地図から消された島・大久野島 / 現代の楽園。過去の遺物。

公開日: : おもうこと, ホラーについて



 

 

■うさぎの楽園・自然が色濃く残る小さな島

 

 

どうも最東です。

 

 

久しぶりの記事は取材で訪れた大久野島についてのお話したいと思います。

 

 

ちなみにみなさん、この大久野島という離島をご存知でしょうか。

 

 

広島の忠海港から3キロほど沖合にある小さな島。

 

 

行楽シーズンなどは多くの観光客が訪れ、離島ならではの自然を感じることができます。

 

 

近年では外国人観光客なども多く、ますます賑わいを見せています。

 

 

この小さな離島に一体なんの魅力があって観光客が訪れるというのでしょうか?

 

 

その答えはこれです。

 



 

うさぎ。

 

 

しかも、大量に生息しています。

 





 

驚くのは、大久野島に生息する全てのうさぎは飼育されているのではなく、野生のうさぎで、その数は現在700羽にも及ぶそうです。(2017.2.7現在)

 

 

上陸してほんの10歩も歩けばひょこひょことうさぎがこちらに走り寄ってきてはかりかりと足を掻きながら餌をおねだり。

 

 

その姿の可愛らしさに思わず頬が綻んでしまうことは請け合いでしょう。(私もそうでした)

 

 

さて、ではなぜこの島にはこんなにも多くのうさぎが野放しになっているのでしょうか。

 

 

その訳は、島外の小学校から8匹のうさぎが持ち込まれ島に放たれました。

 

 

それが野生化したのちに繁殖、現在の形になったというのです。

 

 

なるほど。そういうことなら存分にうさぎとのモフモフタイムを満喫しよう!

 

 

……だなんて、なるわけありませんよね。

 

 

 

■忌まわしき記憶が残る島

 

 

 

実際のところどこら辺までが正しい情報なのか分かりませんが、島内には少なくとも上記の理由でうさぎが多いと書いてあります。

 

 

ですが、この島にうさぎが多いのにはもう一つの説があります。

 

 

何を隠そう、私が大久野島に訪れたのもその“もう一つの説”にちなんだ理由からです。

 

 

さて、『大久野島にうさぎが大量繁殖したもう一つの説』に触れる前にこの島についての歴史を語らねばなりません。

 

 

現在、大久野島には島民はいません。

 

 

島内には宿泊施設がありますが、従業員の人たちはここに住んでいる訳ではないので島民とはいえないでしょう。

 

 

その他の施設はテニスコートであったり、フェリー乗り場の待合室くらいでしょうか。

 

 

ですがそのどちらの施設にも人が常駐していることはなく、当然ながら民家の一つも見当たりません。

 

 

昔からそうなのかと言えばそういうわけではなく、戦前には少ないながら島民が自給自足で生活を営む平和な島だったとのこと。

 

 

島民を島外移住させると日本陸軍はこの島を大久野島砲台(芸予要塞)として、日露戦争時に多くの砲台が配置されました。

 

 

しかし、豊予要塞ができたことにより、一度も使われることなく芸予要塞は廃止となりました。

 

 

実際に島へ訪れると、餌目当てに寄ってくるうさぎに紛れて当時の砲台跡がそのまま残されており、使われなかったとはいえ戦争の足跡を見ることができます。

 

 

さて、ここからが本題です。

 

 

大久野島は一度も使われなかった砲台が忌まわしき記憶なのではありません。

 

 

芸予要塞としての機能を停止したその後、大久野島に再び大日本帝国陸軍がこの島に利用価値を見出します。

 

 

それは毒ガスの製造所。

 



 

国際条約で毒ガスの製造および使用は禁止されていたため、秘密裏に製造されていたといいます。

 



 

戦後、見つかった毒ガスの総量は全人類を死に至らしめることのできる量だったそうです。

 



 

大久野島で毒ガスが製造されていたのは昭和4年から終戦する昭和20年まで。

 

 

 

実に16年間も禁止されていた毒ガスを製造していたのです。

 



 

■うさぎとの因縁

 

 

 

さて、冒頭にお話しした『うさぎが繁殖したもうひとつの理由』ですが、この大久野島と毒ガスに関係します。

 

 

毒ガスの実用実験でうさぎが使われ、製造所が廃棄されたのちに放たれたうさぎが野生化、繁殖したという説。

 

 

これが毒ガス島と呼ばれた大久野島とうさぎの関係なのです。

 

 

しかし、実際のとこは前述の『島外から持ち込まれたうさぎが野生化・繁殖した』という説が事実とのこと。

 

 

毒ガス施設が全て廃棄された際に実験動物として使われたうさぎは全て殺処分されたそうで、当時のうさぎの子孫はいません。

 

 

とはいえ、元々実験動物として持ち込まれたうさぎ。

 

 

その数十年後に持ち込まれたそのうさぎが島内で700羽にも増え、今や大久野島の象徴となっているのは因縁を感じえません。

 

 

 

■今も残る当時の施設

 

 

 

戦時中、大久野島は毒ガスを作っていることを対外的に隠すにあたり、地図からその存在を抹消します。

 

 

初めから存在しないかのように扱われ、地図にない島では毎日殺人ガスを作り続けていました。

 

 

日本軍は実際に毒ガスを使用したことはないとしていましたが、昭和54年にそれは覆されます。

 

 

実際に使用され、多くの人間を犠牲にしました。

 

 

さらに戦時中、大久野島で毒ガスを製造していた民間人のほとんどは自分が何を作らされているのかを知らなかったといいます。

 



 

広島は日本人ならずとも世界中に知られているように、原爆が投下された土地。

 

 

14万人もの人間が一発の爆弾で死に至りました。

 

 

ですが、その広島の一画で全人類を滅ぼしてしまう量の毒ガスが作られていたのです。

 



 

そう考えると……どちらが悪なのか、曖昧な気持ちになってしまいます。

 

 

本土決戦などが仮に現実になっていた場合のことを考えると……、このへんでやめておきます。

 

 

さて、そんな毒ガス施設ですが戦後アメリカの管理下に置かれ、そのほとんどが取り壊され、残存した毒ガスも廃棄されました。

 



 

ですがそのうちのいくつかが今もまだ残されています。

 

 

あの日の呪われた記憶を忘れないように……。

 

 

その意味では広島市内にある原爆ドームをその役割は変わらないのかもしれません。

 

 

朽ちてはいますが、確かに感じる人間の息遣い。

 

 

その痕跡に私は息を呑みました。

 

 

松の木の葉が落ち、茶色くなった落ち葉や木の実などをみるとここで作られた毒ガスで同じように元の姿とは変わり果てた姿で死した人たちが思い浮かびます。

 

 

当時、毒ガス工場で働いていた方が松の葉をつまようじ代わりに歯の間を掻くと、翌日口中が何倍にも晴れ上がり、数か月も治らなかったと述懐している映像を見ました。

 

 

他にも風船爆弾の製造もしていたことから火薬を詰める作業もあったらしく、この時の事故で女学生が数人大怪我をしたという話も。

 

 

罪のない民間人が戦争で死にました。

 

 

ですが、罪のない民間人の背に気付かぬままに罪を背負わせた大日本帝国という愚かな国に私は憤りを禁じ得ませんでした。

 



 

■休暇村 大久野島

 

 

 

色々とお話しましたが、うさぎは可愛いですし海や景色は圧巻です。

 



 

負の遺跡を無しにしても素敵な場所なので、みなさんも一度訪れてみてください。

 

 

どれだけの兵器が作られ、忌まわしい記憶のある島だったとしても、そこで生命がまた生まれ増えてゆく。

 

 

その結果が“うさぎ島”と呼ばれるほど人を魅了する島になったのではないでしょうか。

 

 

この島には『毒ガス資料館』という小さな資料館があります。

 

 

その中にはこの島の歴史が余すことなく全て残されていました。

 

 

戦争と平和を象徴するような、不思議なコントラストが共存する島……大久野島。

 

 

私もまた必ず訪れたいと思います。

 

 

 

 

最東対地

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