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【連載】めろん。63

公開日: : 最終更新日:2020/09/16 めろん。, ショート連載, 著作 , , ,






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・綾田広志 38歳 刑事⑳




 俺は息を潜め物陰から物陰へと渡り、移動した。




 自分が身を隠す……というよりは、俺の存在を悟らせなければ住民は姿を現すかもしれないと思ったからだ。




 すでに住民には俺がここに侵入したということは周知なのかもしれない。




 だが逐一居場所を捕捉されているような、高度な監視システムがあるとは思えない。




「全部推察だな……」




 自分で言って笑えてくる。そう、なにもかも俺の想像でしかない。高度な監視システムとは思えないが、根拠はない。高度な監視システムなのかもしれないのもまた否定できないことなのだ。




 突き詰めればキリがない。ツボにハマればごっこ遊びの延長としか思えなくなってしまう。邪念を振り払い、俺は気を引き締めた。




 隠れることよりも住宅に人の気配がないか細心の注意を払う。外にこれだけ人がいないということは、住民たちはお互いに警戒しあっているに違いない。




 それでも生活を行う上で外出をしないことはできない。根気よく待っていれば、必ず誰かはでてくるはずだ。




 実際に窓に人の気配を感じた。あれは気のせいではない。




 外に出てこない理由のひとつはきっと俺だ。俺が外を出歩いている限り、連中は警戒を解かない。隠れているのはそういうわけだ。




 それに時間がかかったとしても、町を調査するより人に聞いたほうが有意義なはずだ。




 そう思いつつ、俺は時を待った。




 人の姿を確認したのは、それから十数分ほど待ったころだった。




 一軒の家から、周囲を警戒しながらおずおずと女が現れた。女は中年くらいだろうか、落ち着いた雰囲気を纏っている。




 住宅の塀に沿うように歩く。彼女もまた他の住人に見つからないよう注意を払っているのがわかった。




 接触を試みるにしても、まだ様子を見守っていたほうがいい。声をかけるタイミングを間違うと驚かせてしまい、騒ぎになるのは目に見えている。




 女を尾行けていくと、どうやらスーパーに行くらしい。




 スーパーがあるということは確認していた。恐らくあそこには確実に人はいるだろうが、店に入ることは避けていた。




 わざわざ自ら目立ちに行くようなものだ。それに複数の人間がいるだろうあの場所に行くというのはそれだけで危険な行為に思う。こんな異様な町にある店舗で勤める人間は十中八九両間側の人間か、もしくは訳あり。一般人ならともかく、警察の人間なら誰だってあそこが危険だということはわかるはずだ。




 おいそれと入れるような場所ではない。




 つまり、あの女と接触するならばスーパーに入店する前にしなければならなかった。




「きゃ……」




 うしろから口を押え、背に親指を突き立てた。




「騒ぐな。騒げばこのまま腹をつらぬくぞ」




 まるでナイフを突き立てているというようなハッタリを吐いた。見るからに普通の一般人という見た目のこの女ならば騙されてくれるはず。




「……ッ」




 女は怯えながら一度、頷いた。




 ちょうどそばにひと目につかない路地があり、女とそこまで行く。口元を押える手に女の震えが伝わり、胸が痛んだ。




「そのまま聞いてくれ。乱暴な真似をして悪かった。これを見てくれ」




 背中に突き立てた親指をしまい、警察手帳を開き身分を明かした。




 女の震えが次第に落ち着いてゆくのがわかる。




「見ての通り、警察です。話を聞かせてほしい」




 うなずくのを認めてから口元から手を離した。ゆっくりと振り返った女に対し、頭を下げ非礼を詫びる。




「事情があってこの町を捜査している綾田です。改めて先ほどの無礼をお詫びします」




「……警察がなにを捜査しているっていうんですか」




 女から怯えは消えたが、警戒は解けていない様子だった。




「私は外部からやってきました。ここにいると思われる人を捜しているのですが……」




「人探し? ここにいるんなら刑事さんもわかっているでしょ」




「わかっている? なんの話でしょう」




「ここにいるのはみんな、人喰い。ここに入れば誰もでられない……。それなのにわざわざ来たんですか?」




 女のまなざしが懐疑的な光を帯び始めた。俺が言っていることを疑っているようだ。




「人喰い……」




 それに人喰いという言葉。まさかメロンのことを言っているのだろうか。




「ここに警察だなんて、はじめて聞いた。本当にそうなんですか」




「身分証明はしたはずです。偽りはありません」




「そう言われてもね……」




 そういって女は歪んだ笑みを浮かべた。まるで信用していない。それを物語っているような顔だ。




「無礼は詫びました。現職の警官がするべき行為でなかったことは認めます。ですが、私は本当に……」




「そうじゃないですよ。そうじゃなくて、内輪もめでもしたのかなって」




「……仰っている意味がわかりません」




「だってここに住んでいる人はみんな、警察に連れてこられたんですよ」




「なんだって」




 よほど俺の顔が青ざめていたのか、女は表情を変えた。




 これまでの嘲笑しているような、諦観めいている歪んだ笑みは消え、動揺の色さえ見える。




「……え、まさか知らなかったんですか。待って、そんなことないでしょう! だってみんなそうなんですよ」










めろん。64へつづく

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