ゲームのバグ / ホラー小説
■エミュレーター
みんな、エミュレーターって知ってる?
ある意味もう古いよって言われるかも知れないんだけどさ、ようはゲームハードのプログラムをパソコンにインストールしてさ、買わなくてもゲームし放題なのさ。
もちろん、できるやつとできないやつがあるから万能ってわけじゃないけど、お金使わないで済むのが最高にいい感じ。
今日もクラスの連中が新作ゲームが欲しい欲しいってほざいてる横で、鼻歌歌いながらやってやったぜ、超気持ちいい!
けれどいざなんでもかんでもゲームやり放題ってのも考え物で、こう簡単に手に入っちゃうとすぐに飽きちゃうんだよな……。それが最近の悩みかな。
こうなってくるともうコレクターになってくるよね。
一回もやったことのないゲームでも、ついついダウンロードしちゃう。どんどん、ダウンロードしてはフォルダの中が増えていくのを見るのが楽しみになったんだ。
気付けばフォルダの中のゲームタイトルは軽く100を超えて……というか、100を超えてから数えなくなったから実際はこの何倍も数があるんだと思う。
新作が発売されたら次、新作が発売されたら次、とどんどんダウンロードした。
あ、言っておくけどこれが犯罪だって言う自覚はちゃんとあるからね?
僕は常識のある男だからね。
■ダウンロード
ダウンロードをするサイトはいつも決まっていて、とある海外サイトだ。
全部英語で書いてあるから、なにがなんて書いてあるのかわかんないけれど、慣れてくるとなんとなく分かってきて、そこからは意外と単純だった。
手順に沿ってダウンロードページまで行って、リンクをクリックする。
『DOWNLOAD』というボタンが出てくるので、それをまたまたクリック。
これだけで新作から旧作のゲームがプレイし放題なんだから、世の中舐めてもお釣りがくる的な?
そうやって僕はいつもと同じ手順で、ダウンロードページに行く。
■違うページ
「あれ?」
慣れた手順でページに行った僕の目に映ったのは、黄色いページに赤い文字で『DOWNLOAD』という文字。
いつも利用しているページは、青いバックにグレイのボタンだ。
「このソフトはサーバーが違うのかな」
時折、ダウンロードの直ページと違うページに飛ばされることがある。
でもそんなときだって大抵は、お目当てのソフトが手に入るのだ。
要はリンク先が違うだけ。
僕はなんの疑いもなしに、『DOWNLOAD』を押した。
画面の中央にメーターが現れ、ダウンロード時間が表示される。
この手のソフトは意外にダウンロードが早い。ま、大体がZIPで圧縮されてるから解凍にそこそこ時間がかかるので、一緒といえば一緒だ。
DOWNLOADだけならば、数秒で済むはずだけど何故か今回はやたらと時間がかかった。
「なんかおっせーな」
僕が落としたのは、モンスターを討伐していく系のアクションゲームだ。
確かに人気作品だと評判だから、なかなかDOWNLOADに時間がかかっているのかもしれないけど……
「それでも5時間はかかり過ぎだよな」
ゲームその物を落とす場合、そのくらいはかかる場合あるけどエミュレーターがあるからソフトのデータ自体はそんなに大きくないはず。
それなのになんで……。
「まぁいっか。寝てるうちに終わるだろう」
ダウンロードを始めたのは、もう夜。
寝て起きた頃には終わっているだろうと思い、僕は眠ることにした。
■モンスター討伐
僕は夢を見た。
僕は戦士で、これから巨大なモンスターを討伐しにいく。
パーティーを組む仲間がいないので、今回は仕方なく一人でクエストに出ることにした。
討伐するモンスターによって有効な武器が違うので、僕は今回ライノサラスという犀型のに有効な武器、アトミックハンマーを選んだ。
アトミックハンマーとは、その名の通りハンマーの武器で突進してくるライノサラスを紙一重で回避し、壁に角がささって動けないところをハンマーで頭を叩くのだ。
このゲームをプレイしたことはないが、この前作を僕はやっている。
大きく変わっているところもないので、僕はまず攻撃方法を知っているライノサラスを討伐の対象に選んだのだ。
ケージが開き、広大なマップが眼前に広がった。
僕はあちこちと探し回り、ライノサラスを探す。
見つけたら、知っている攻略法でライノサラスの頭を叩く。
「やっぱり楽勝だなこりゃ」
何発もハンマーを叩きこんでやると、ライノサラスは苦しみの雄たけびを上げて倒れた。
「アイテムを取らなきゃ」
息絶えたライノサラスの角を剥ぎ、新しいアイテムの素材にする。こういうところが面白いゲームなのだ。
「お? これももらっておこう」
ライノサラスの腹を割き、回復アイテムの素材になるライノの膵臓をとりだした。
「よぉし、村に帰ろう」
■夢から覚める
モンスターを倒し、アイテムを手に入れたあたりで僕は目が覚めた。
ベッドで眠っているはずだったのに、目が覚めると僕は何故か立っていて、服の上からスケボーやポスターを括りつけていて、なんだか訳の分からない格好をしていた。
「ひぃっ!」
だがそんなことよりも、目の前一面に広がっている夥しい血に僕は驚いてしまった。
「な、なんなんだよ……」
後ずさりした僕は右手になにかを握っていることに気が付く。何を持っているのかと、目を落とすと……。
血まみれのカナヅチ。
「……え」
足元を見ると、頭の皮を剥がれて内臓を腹からぶちまけている死体。そして、僕の左手には皮と膵臓が……。
「あ……ああ……」
恐る恐る足元の死体の顔を覗き込んでみる。
「ぎゃああああああああ!!」
それは僕のお母さんだった。
【クエストクリア!】
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