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ホラーブログ小説 途中下車

公開日: : ショート連載

本日も当列車をご利用いただいてありがとうございます。


まもなく、見殺し~見殺しです。


左側のドアが開きますご注意ください。




車内はうなだれたままぐったりとせもたれにもたれる乗客がまばらに見える。


どの乗客も生気がない血色で、床の一点を見つめていたり、背もたれに任せたまま車内の天井を見詰めたりしている。


ガタンガタンと、列車はレールの上を滑ってゆく


どこにでもある街の、どこにでもある風景。



次の停車駅は虐待~虐待です。




ドア右側に変わります。足元にご注意してご降車ください。


その駅では幼い男の子の手を引いた女性が乗車してきた。


顔は他の乗客と同じく生気がない。


手を引かれている子供も同様だった。


続いて車椅子に乗せた老婆とそれを押す老夫が乗車する。


キコキコと車の音を立てて、窓際のドア付近に立った。


シューという空気圧を抜く音が列車のドアが閉まることを周りの人間に知らせる。


音と共にドアが閉まる。


そのタイミングで、椅子に座っていたスーツ姿の男がびくん、と体を大きく一度痙攣させてキョロキョロと辺りを見回した。


どうやらこの駅に着くまで眠ってしまったようで、焦ってしまったようだ。


向かいの窓から見える駅名のプレートを見て、自分が下車する駅でないことに安心したのか、頭の重みに任せて肩の力を緩めた。

ご乗車ありがとうございます。



虐待を出ますと次はいじめ、いじめです。




肩を降ろした男はそのアナウンスにぎょっとし、思わず天井のスピーカーを見上げる。


「いま、なんていった?」


独り言のように呟くと、アナウンスがもう一度流れないか注視している。


誰もなにも言葉を発しない列車は、ただ乗客を揺らしながら進んでゆく。

いじめ~いじめです。


その駅では5名くらいの中学生が乗車してきた。


男女半々……といったところか。


その彼らもまた生気のない顔色だということは言うまでもない。


そんな彼らと、他に同乗している乗客たちを見比べる先ほどの男。


乗客たちがみんな同じような顔色をしているのに気付いたのか男は足の上に置いたカバンを少し強く握り、体をこわばらせている。


違和感と異質感、そして異世界感を感じているのだろう。


乗客たちとは違った意味で血色を引かせている。


次は強姦、強姦です。



次の駅を告げるアナウンスを聞き、目を見開いてまたスピーカーを見詰める。


顔色は青いのに、額に汗を光らせるといったアンバランスな表情で、男は小刻みに震えている。


強姦、強姦です。



制服が乱した女子高生が乗車してきた。


太ももからは一筋の血を流している。


「わあああああああああ!」


その姿を見た男が慌ててその駅に下車した。


女子高生と列車の窓に見送られながら男の尻が震えている。




次は放火、放火です。


車内大変熱くなりますのでご注意ください。





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