噂
公開日:
:
ショート連載
奇妙な噂を聞いた。
このところ、駅前のゲームセンターに私がいるというのだ。
職場の同僚からそれを聞き、「上司に知られる前にやめておけ」と謂れのないことに釘を刺された。
いい大人である私がいまさらゲームセンターに一人でいくことなどないだろう。
そう思い、同僚の話を耳を筒にして流していた。
「あ、そうそう! こないだゲームセンターにいましたよね」
別の場所で大学の後輩と飲んでいるとき、またもやゲームセンターで私を見たという。
実は、既にこれで4,5回目の目撃談だった。
――そんなに似ているのか。
好奇心もあり、私はそのゲームセンターに行ってみた。
最新のゲーム達に囲まれて、少々光酔いしそうになったが、ついに見つけた。
「ゲーム」というなんのひねりもないタイトルが書かれた台に座っている男。
なるほど、後ろ姿は確かに似ている。
しかし話しかけたところで、何を言っても言いがかりになってしまうので、
ただ後ろから覗き込んでみた。
(どんなゲームなのだろう)
そのゲーム画面には、ゲームをしている男の背後からゲーム画面を覗き込んでいる画像が映っていた。
「……え、なんだこれ」
思わず声が漏れる。
「あ~あ、見つかっちゃった。ゲームオーバーだね」
男は私に振り返り、残念そうに言った。
その男とは、……私だった。
『最近、あの人仕事全然来てないけど、ずっとあのゲームセンターにいるみたいだよ』
ツイート
![]()
スポンサードリンク
関連記事
-
-
【夜葬】 病の章 -35-
-34-はこちら 鉄二は夜
-
-
ツアコォウ← / ホラー小説
■代弁者 &n
-
-
【夜葬】 病の章 -13-
-12-はこちら 「へえ、
-
-
【連載】めろん。34
めろん。33はこちら ・綾田広志 38歳 刑事⑨ 嬉々として持論を述
-
-
【夜葬】 病の章 -75-
-74-はこちら 事件が起こったのは、村に訪れた2日目だった。
-
-
マグロ / ホラー小説
■マグロ 「わあ、綺麗なマグロです
-
-
ホラー小説 / お見舞い その1
■悪夢は突然に 「卓也! 卓也! お父さんだぞ! ほら、しっかりしろ!」
-
-
【夜葬】 病の章 -32-
-31-はこちら 太平洋戦争終結から三年の月日
-
-
【蔵出し短編】アキレス健太郎 4
アキレス健太郎 3はこちら 「あの、三浦さん!」 本館の外に
-
-
【夜葬】 病の章 -5-
-4-はこちら 元は昔、蛇
スポンサードリンク
- PREV
- ネットに転がる恐怖を融合 / 恐怖に飢えた現代人
- NEXT
- ホラー小説 めろん。 -1
