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アナログカメラ/ ホラー小説

公開日: : 最終更新日:2015/02/15 おもうこと, ショート連載

アナログカメラ

■おかしな少年

 

 

 

その少年は、ボロボロのTシャツに半ズボンでじっと僕を見ていた。

 

 

一体なんの用があるのかと思って、話かけるけれど一度も僕の問いかけに反応したことは無い。

 

 

……実際、人当たりがいいわけでもないし、コミュニケーションが得意な訳でもないので、一度二度リアクションがない時点で、それ以上話かけるのをやめた。

 

 

最初は、会社の玄関にその子がいた。

 

 

しばらくすると、玄関より少し離れた正面社門から覗き込むようにしていた。

 

 

気味が悪いなぁ……とも思っていたが、毎日見かけるわけではない。

 

 

たまに、ごくたまに見る程度なので、同僚の誰かに聞こうと思っていてもつい忘れてしまう。

 

 

それでも、いざその少年と目が合うと全身の血の気が引くような寒気を感じる。

 

 

 

■幽霊?

 

 

 

もちろん、その少年が幽霊ではないか? という疑いも持った。

 

 

実はホラーやオカルトと言った怖い系のものが大の苦手である僕は、その疑いを全身全霊で否定し、近隣の学校にいけないほど貧しい子供なのだと言い聞かせたのだ。

 

 

もしもそうだとするのなら、かわいそうではあるけれど全く他人である僕にそれをとやかく言う権利もない。

 

 

……なんて、普段の生活の中では忘れているようなことなのに、一人で夜、部屋にいると毎回のように思い出してしまう。

 

 

これがストレスにならなければいいんだけど……

 

 

 

■ロケ地に……

 

 

 

僕の会社は大手とは言えないが、まぁ中堅クラスの出版社だ。

 

 

マンガや雑誌、専門誌などと割と幅広い書籍をフォローしている。

 

 

だけどこの業界は慢性的な予算不足と人手不足に悩まされている。元々、編集部で入ったのに、趣味がカメラだというだけでロケ班ではカメラマンも兼任している。

 

 

だけど、趣味がカメラだといっても僕はアナログ派で、フィルムを巻き取り、現像するタイプを好んだ。

 

 

それだからデジタルカメラが主流だといっても、その扱いを覚えるのに大変だったのだ。

 

 

それでも構図や、基本的なカメラワークなど、それなりの知識を持ち合わせていたため、僕のカメラマンという位置は揺るがなかった。

 

 

ロケはスケジュールが分刻みで大変ではあったけど、日ごろのデスクワークから離れられる息抜きとしては助かる。

 

 

言った通り、趣味のカメラはアナログ派なので、仕事の写真のついでに自分の写真を撮ったりもする。

 

 

地元の郷土料理や観光地などを、二台のカメラで撮影できるのは役得と言えた。

 

 

 

■いないはずの少年

 

 

北海道は旭川のロケ。

 

 

北国に訪れる機会なんて滅多にない僕は、このロケに大分とテンションが上がった。

 

 

有名な旭山動物園に取材とあって、愛らしくも雄々しい動物たちを激写してゆく。

 

 

デジカメを構え、撮影し、次にアナログのファインダーを覗き込む。

 

 

その中で、僕は見てしまった。

 

 

ボロボロのTシャツの少年。

 

 

全身が総毛立つ。

 

 

完全に見間違いだ。そうに決まっている。

 

 

カメラを変えてデジカメで見ると少年の姿はなかった。

 

 

「……気のせいか」

 

 

いくらなんでも見間違いだろう。その予想が正しかったという安心でその時は納得した。

 

 

 

■デジカメには写らない

 

 

 

その後も動物園内を周り、オオカミやペンギンなどの庁舎を周り旭山動物園の顔でもあるホッキョクグマの庁舎へと足を運ぶ。

 

 

真っ白く巨大なホッキョクグマの迫力に圧倒され、感動した僕は是非このホッキョクグマもカメラに収めたいと、アナログカメラを構える。

 

 

「……?!」

 

 

信じられないものが写った。

 

 

ボロボロのTシャツの少年……。

 

 

しかも、ホッキョクグマの水槽の中で僕を見つめていた。

 

 

水中にいるのにも関わらず、全く濡れてもいないし衣服も水中なのにゆらめきもしない。

 

 

水槽を悠々と泳ぎまわるホッキョクグマでさえもその少年が見えていないように、平然していた。

 

 

いや、それどころか僕以外の人たちは誰もあの少年に気付いていない。

 

 

「あのっ!」

 

 

「ああ? どうした?」

 

 

「あそこに……男の子が……」

 

 

僕が指差す先を誰もが見るのに、「何言ってんだお前」と相手をしてくれない。

 

 

「そんな!?」

 

 

なぜ誰も反応しないのかと思い、もう一度見るといない。

 

 

「本当にいたのに……会社にいたあの……」

 

 

そう言ってもう一度アナログカメラで覗くとやっぱり見える。

 

 

「誰か……ッ! これで、これで見てみてください!」

 

 

 

■ついてくる少年

 

 

 

僕が慌てたように言っても、誰もカメラを覗いてはくれなかった。

 

 

それどころか趣味のカメラ持ってなにを叫んでんだと呆れ顔をされる始末だった。

 

 

同行した先輩が、どうやら僕が疲れているのだと思ったらしくその後、カメラマン役を変わってくれた。

 

 

僕としては不本意だったが、あの少年が瞼に焼き付き、恐ろしくてカメラを覗けなくなったから、やむなしにお願いをした。

 

 

ロケ用に借りたレンタカーで休んでいると、次第に時間が『あれは錯覚だったのではないか』と僕に問いかけてくる。

 

 

確かに僕は疲れているのかもしれない。

 

 

会社に居たあの少年が、こんなところに……しかも水中なんかにいるはずがないじゃないか。

 

 

そうだ。馬鹿げているさ。

 

 

 

 

 カシャ

 

 

 

 

「……なんの音だ?」

 

 

なんの音だなんて、分かり切っていた。だけど、そういうことではなく『なぜ触れてもいないのにその音がなるのだ』という疑問からこの言葉が出たのである。

 

 

 

 

 カシャ

 

 

 

 

もう一度、それは鳴った。

 

 

間違いない、これはシャッター音。しかも、……アナログの。

 

 

 

■現像した写真

 

 

 

その後アナログカメラで一切写真を撮らずにロケを終え、弾丸で僕たちは帰ってきた。

 

 

フィルムを現像に出し、数日後に撮りに行く。

 

 

帰ってきた写真を見る。どれもこれも我ながらうまく撮れている。

 

 

その中でも見るのが恐ろしかった例のホッキョクグマの写真。

 

 

「……なんだ、なにも写ってないじゃないか」

 

 

やはり疲れからくる錯覚だったか……。

 

 

一息吐くと次の写真を捲る。

 

 

「……ひぁあっ!」

 

 

余りのおぞましさに僕は悲鳴をあげ、持っていた写真を放り投げると頭を抱えこんだ。

 

 

その写真は、車内の写真だ。

 

 

あの二度鳴った、不可思議なシャッター音。聞き間違いではなかった。

 

 

窓の外を眺めている僕を横に置いたカメラが撮った写真。

 

 

 窓の外を見る僕の目の前に、あの少年が窓にへばりついていたのだ。

 

 

「……!?」

 

 

放り投げてしまった写真の中で、もう一枚の写真が僕の目に入った。

 

 

「ぎゃあああああああ!」

 

 

一度目のシャッター音でカメラを向いた僕の写真。

 

 

窓の外には少年……だが、さっきのとは少し違った。首がなかったのだ。

 

 

 その首は、僕の膝の上に乗り僕を見上げていた。

 

 

 

 

 

――その一件依頼、カメラマンは断っている。

 

 

 

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デザイナーのお仕事

 

 



 

 

血まみれの女

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