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怪紀行青森・東北最恐?それとも最狂?止まらないおもてなし とびない旅館《後編》

~前回までのあらすじ~

変人がやっている旅館にきたよ

■たのしくクッキング♥

「とびない旅館のごはんは、〝まかない〟なので自分で作るんだよ~」

初手、意味わからん。

郷土料理『芋すり餅』を食すべく、我々は散らかっ……いや、潤沢な食材や道具に囲まれた厨房で調理をはじめました。

皮を剥いたジャガイモをすりおろし、布巾で汁を絞る。ボールに受けた汁は、白く固まったでんぷんが沈殿しており、余計な汁を捨てて絞ったジャガイモの身とでんぷんを混ぜる。

そうして粘土状になったものをスプーン大に練り分け、味の煮干しでとった出汁にぶち込んでいきます。

『芋すり餅』はとびない旅館でしか食べられない、ということですが、郷土料理なのになぜでしょうか。

「とびないさんのお母さんがねえ、よく作ってくれたんだよ~。病気で入院しちゃって、とびないさんひとりで旅館やらなきゃいけなくなったんだけど、料理なんて作れないじゃん?(軽い) だから苦肉の策で芋すり餅を出したんだよ~」

と、こういういきさつで芋すり餅を出すようになったんだとか。つまり、とびない家に伝わる秘伝の料理なのですね。なるほど

しかし、ひとりで切り盛りしていたため比較的お手軽な芋すり餅でも手が回らず、まかないという形にしてお客さんに手伝ってもらうようになったのだそう。

「そうするととびないさんも楽だし、お客さんもごはん食べられるし、一石二鳥だよね~」

ぽじてぶ!

「ちなみにとびない旅館ではいつ泊まっても、何回泊まっても、献立は一緒だよ~。だから二回目とか三回目の人は外に食べに行ったり、デリバリー頼んだりするんだよね。とびないさんもそっちのほうがいいよね、奢ってくれることもあるし」

なにかと驚きの情報が飛び出していますが、とびないさんを知ってしまった我々はそんなことではもはや動じなくなっていました。

ちなみにとびない旅館のまかないの献立はこちら。

芋すり餅

市販の炊き込みご飯の素に生ホタテぶち込みご飯

白菜の漬物

以上。

おかわりはたくさんあるのでおなかはいっぱいになります……というか、

ごはんめっちゃ美味い!!

ホタテパワーなのか、お米どころだからなのか、とにかく美味い。

芋すり餅もはじめての触感で、もちもちしていて食べ応えがあるし、白菜の漬物もやたら美味い。なんなんだとびない旅館。とびない旅館なんなんだ。

■食後のとびないツアー

さて、ごはんを食べ終わったあと、そわそわしているとびないさんに連れられとびない旅館ツアーがはじまります。

我々もお腹いっぱいなのでHPは回復済み。なんでもこいの状態です。

とびない旅館の館内は、物がない場所ありません。

いや、厳密にいえばトイレとお風呂以外、でしょうか。

玄関から廊下、客室にいたるまでプラモデルやモデルガン、映画のポスターにDVDとまるで自然増殖しているように、あちこちに……それもすごい量のそれらがあちこちにあります。

決して大げさではなく、店ができるレベル。それもそこそこ大きな店です。

テレビでも紹介されていた大広間は、大広間だったころの面影はすでになく、おもちゃ箱をひっくり返したような状態でした。

最東やMOCCHANは好きなほうなので楽しめましたが、それらの趣味に興味がない人にとってはただただ苦でしかないことは請け合いの空間でした。

あたいたちにとっちゃ、天国だったけどな!

とびないさん作

「じゃあ、妖怪ハウスに行っちゃおうか~」

説明しよう!

『下北妖怪ハウス』とは、とびない旅館の向かいにある元・お土産屋さんである!とびないさんのお母さん(初代オーナー)が生前、閉業したお土産屋さんを買い取り、亡くなったあとはとびないさんが下北妖怪ハウスという魔改造を行ったのである!

下北妖怪ハウスには、『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラの等身大人形や、被り物、それにちなんだ創作物が所狭しと犇めいています。

言うまでもありませんが、ここにもプラモやおもちゃがぎゅうぎゅう詰め。

「昔、むつ市で『第八回世界妖怪会議』って催しがあって、とびないさんが水木しげる先生から造形物を任されたんだよねぇ。その時に作ったのがこれなの」

なるほど、だからねずみ男や鬼太郎など同じキャラが何体もあるのか。っていうか、クオリティ高いな!

「ほとんどとびないさんが自分で作ったんだよ~これとかあれとか……」

こんだけ喋ってこのひと疲れないのかな……、と心配になるほどとびないさんは説明してくれます。

とびないさんと鬼太郎

「二階はひとりずつ行ってね。地獄が待ってるよ~」

意味わからん

と、先鋒に打って出たのはMOCCHAN。

しばらくして出てくると、

「とびないさん……あんた、プロだよ……」

とニヒルに言い放ちます。いみふ

「なまら待ったべさ」

と真島くんすっとばすの大河内のセリフで最東もいざ地獄へ挑みました。

結果:地獄でした。

しかも、すごく真面目でアートな地獄。とびないさんのこだわりが強すぎて、制作当時、手伝ってくれていた芸大生に嫌われていたそうな。(なんかわかる)

一見、マイペースなとびないさんですが趣味や得意分野のことになると絶対に譲らない頑固さがあるのがわかりました。こういうところが人間力なのだなぁ、と感心します。

「すごいっすわ……」

地獄めぐりの出口にあった1/1プラモデルショップ(ととびないさんが言っていた)も合わせて堪能しました。なんか情報とものが多すぎて、一泊だけじゃ足りない。

「ここね、シャーマンキングで葉とアンナがはじめて会ったところなんだよね」

突然投下される爆弾発言。なんて?!

「それで青い髪のすごい恰好のコスプレの子が前にきて、見せてくれっていうからここの中に入れたんだよねぇ。そしたら、その子、シャーマンキングのファンだったらしくて『聖地になんてことしてくれたんだ!』ってすごく怒られたんだよね~」

そら怒るやろ!笑

シャーマンキングのファンのみなさま、とびないさんに代わり陳謝します。でも絶対今のほうがいいので、絶対泊まりにきてくれよな!

■ようやく客室へ

そこからまた大広間に戻ってあれこれととびないさんのありがたい講義が再び繰り広げられます。

時刻は0時を大きく回り、最東とMOCCHANの体力ゲージは点滅。斬影拳ガードしただけでKOされるくらいギリでした。

しかし、とびないさんの舌鋒は留まることを知らず、さらにヒートアップする気配。

「とびないさん……お風呂はもういいです」

「お風呂? そうだよ、お風呂は明日にしなよ!」

しゅごい。こんなこと客に言う主人いる?(褒めてる)

「だから、今日は寝ます……。朝から活動してるので」

「えっ!寝るの?! だめだよ~、朝まで喋ろうよ~」

喋らんやろ!ってか、喋ってんのあんたやがな!という心の声をぐっとこらえ、私は懇願しました。なんなら泣いてもいい覚悟です。

「とびないさんに付き合わず、もう寝るんなら……座敷童に呪われるよ……

脅迫してきた!客に脅迫!

衝撃の最東とMOCCHAN。

とびないさんは視線を感じながら、逃げるように二階の部屋へ。18時に旅館に到着して、部屋に入ったのが25時30分。こんなのはじめて。

座敷童目撃率ナンバーワンのその部屋には、おもちゃを備える祭壇があり、ひと目で異様なのがわかります――が、疲れてそれどころではありません。こんなのはじめて!

とりあえず浴衣には着替えて、最東はすぐに寝ました。MOCCHANは座敷童を激写すべく、暗くした部屋を動画に収めています。この時、オーブが映りました。

祭壇にはお供えのおもちゃがいっぱい

ぐっすり眠り、朝ごはんは鮭定食。なんと、朝は手伝わずちゃんと出てきました!すごい!感動したよ、お母さん、いつもご飯を作ってくれてありがとう……。と母に感謝の念を東北の地から送ってしまうほど感動してしまいました。

しかも、鮭も海苔も納豆もごはんも全部美味い!なんだろう青森だから?とにかく、料理が美味しい。

「お風呂入ってるよ~」

そうだった。

昨日、お風呂も入らせてもらえなかったんだった。

そういえば、テレビでアンタッチャブルがお風呂に入ったとき、熱湯で跳び上がっていたな……と思い出し、いっぱいに張った湯船におそるおそる浸かってみると――

ぬるい! ほぼ水!

なんだこの両極端は!!熱いんちゃうんかい!!逆にぬるいって!!

あまりにあまりな状況に、最東はお風呂に浸かりながら思わず笑ってしまいました。

3本ずつくらいあったシャンプーのボトルは全部空でした。(頭洗えなかった)

最後、とびない旅館を出る時にモノホンの旅客機の頭を見せてもらい、我々は最後のスポット恐山へと向かうのですが……

「とびないさんのおかげで、青森旅行の思い出が全部とびない旅館で塗りつぶされたわ」

ナイス名言、MOCCHAN……

でも、とびないさんに会いにまた行きたくなる不思議な旅館でした。

怪紀行青森

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