*

陽だまりのカエルと鶏とパンダ 2






→全編はこちら




※この話は9割作り話です。




■死線、張り詰めるッ――!




「今宵の殉教者(ノベリスト)たちの運命は……このカードが知っている……」




不敵な笑みをうかべ、パームトーンの魔女・曽我 未知子氏が死斗の運命を占うタロットカードを扇にして二対のパソコンに座るノベリストに告げた。




「この戦いで……死人がでる……」




まるでかまいたちの夜の中で象徴的な言葉になっている「今夜12時、だれかがしぬ」のような予言。




ペニーワイザーゆたかを始めとしたノベリストは誰ひとりとしてその不気味な予言に動じなかった。




「諸君らの運命を握るのはこのくじだ! このくじに書いているまま3人一組のチームを組み、書いてある順番のまま戦うのだ! 戦って死ね、戦士どもよ!」




冴沢氏の轟轟たるコールでくじを引き、東軍・西軍の2チームに分かれることとなった。




東軍……(先鋒)木下昌輝、(中堅)川越宗一、(大将)今村昌弘




西軍……(先鋒)水沢秋生、(中堅)ペニーワイザーゆたか、(大将)最東対地




「な……ッッ!?」




絶句。




口の中の水分がすべて干上がり、その場で魂ごと蒸発してしまいそうになる。




それほどまでの衝撃に手足の末端に震えがくる。




なんとか平静を装いながら、油の差していない重機のごとくキリキリとゆっくりと振り向く。




「ほぉ、敵になったか貴様」




レンズに反射した刃のような光が私の眼球を両断するようだった。




木下の静かな殺意ですでに死にそうだ。




「くくく、最東さんと同じチームとは光栄です。あなたとなら素敵なサーカスになりそうだぁ……ふひはッ」




木下からのプレッシャーで動けなくなっていた私の緊張を解いたのは、ペニーワイザーゆたか(以後『PY』)の声。




そして――




「まさか一番手に奴とぶつかるとはなァ……!」




そばにいるこちらの肝が潰されそうなほど強烈な闘争心を全身から放射する水沢秋生。




生唾を飲み込むと喉に痛みが走る。




――恐ろしい。だがそれ以上に、心強いッ……!




「ふっ……」




ようやく私は笑うことができた。




そうだ。私はここへ戦いにきた。




敵を薙ぎ払いに来たのだ。




■おだまり!ノトリー!




タイトルは『陽だまりの鶏』




お題はくじびきにより東軍『カエル』、西軍は『アルコール』に決まった。




「アーユーレディ……」




無言でうなずく両軍先鋒、木下昌輝と水沢秋生。




私の脳裏に曽我氏の「この戦いで死人がでる……」という言葉がよぎった。




「デュエルッッ!」




遂に戦いの火ぶたは切って落とされた!




「シュオラッ!」




空気が張り詰める暇もなく、開始早々ガシャン! と騒がしい音が響く。




何事かと誰もがノベリストに注目した。




「キャァ!」




どこからか悲鳴があがる。




騒音の主は水沢だ。




ひと目見ただけでは彼に何が起こったのか判断がつかない。




だがよく見てみるとその変化に誰もが気付いた。




「野郎……ッ、た、立ってやがる……!」




ごくりと生唾を飲み込み、目の前に起こった衝撃の光景に息を呑んだ。




そう。水沢は座っていた椅子を突き飛ばすとそのまま大股を広げ、仁王立ちでタイプングをし始めたのだ。




「ちょ、ちょっと東軍……東軍の木下さんを見て!」




「な、なにィ! い、いない……木下さんがいないぞぉお!」




あの天下一の軽口男が誰になにも言わず、気配さえ殺して忽然と姿を消した。




「に、逃げたのか!?」




誰かがあげた言葉に冴沢氏が噴き出した。




「ふっ、奴は逃げたりしない。最高にアガっているんだよ……その証拠に奴は集中力を高めるために袖に引っ込んだ。長い付き合いだからわかる。こうなったときの奴は、とんでもないバケモノになるのさ」




「しゅ、集中するために裾に引っ込んだだと……」




仁王立ちスタイルの水沢、裾に引っ込む木下――なんて恐ろしい連中なんだ。私は戦慄した。




誰もが固唾を呑んで見守る中、あっという間に持ち時間の30分が経った――。




「あとは……任せた……ぜ……ゴファ!」




「み、水沢さん!? 水沢さぁーーん!」




激戦の末、疲弊し傷ついた水沢は私の腕の中で絶命した。




「くくく、このペニーワイザーゆたかが水沢さんからの決死のバトン……受け取りましたよ……」




「ペ……ペニーワイザー! 水沢さんが託したあのバトン……うけとめきれるのか!」




「くくく……あーはっはっはっはっ! たのしいたのしいサーカスの時間でござい……子供どもは寝る時間だよ!」




「くっ……!」




PYの高揚したオーラを前にとても声をかけられない。




ひとつだけはわかることは、言っていることが全く理解できないということだ。




「ひひひっ、パンダぁ! パンダぁあ!」




奇声をあげ、軽やかなタップを踏み、踊るようにキーボードを叩くPY。まるでピエロの芸を見ているようだ。




名前はペニーワイザーだが、ペニーワイズらしさは微塵もない。(設定含め)




「と、東軍を見ろ! すごいぞ!」




ギャラリーの声で咄嗟に振り向くと、東軍で頭を抱え咆哮している川越宗一がいた。




狂気の姿に誰もが平静を失う。




「芥川……太宰……川端康成……まるで創作に苦悩する文豪が乗り移っているようだ!」




すごい……! まさにその言葉しかでなかった。




川越は苦悶の表情を浮かべ、頭を抱えるとパソコンの前でもんどりうった。




「うぐぐ……ぐがが~!」




「来るぞ……酔編(すいぺん)!」




話には聞いていた。




川越という男には気を付けろ。奴は酒を飲むとめっぽう強くなる。




誰から聞いたかは忘れた。いや、むしろ聞いていないかもしれない。




だがなんか見てるとそんな感じがしたのだ。




「川越さんのテーブル……あのグラスに入っているのって……」




パソコン横に置かれたグラスを見て誰かが慄いた。




それに答えたのはカウンターで戦いを静観していた井上氏。




「そう……あれは、『廃暴廬(ハイボール)』!」




「やっちまったなあ!」




ああなった川越は止められない。創作のバケモノと化す――!




誰かから聞いたかどうかさだかではない言葉を思い出す。私は体が固まったまま動けなかった。




――30分終了




そして、熱戦・烈戦・超激戦を繰り広げた川越とPYは終了の合図と共に前のめりに倒れ、灰となって消えた。




「ペニャァアアアア!」




断末魔にも近い私の絶叫がパームトーン中に響き渡り、戦友(なかま)に贈るレクイエムとなり京都の夜に染み広がってゆく。




「ついに僕たちで最後ですね」




屍人荘作家・今村昌弘が涼しい顔で声をかけてきた。




涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔のまま、今村を睨む。




「おっと、とても今から決戦に挑む勇者の顔には見えないですね。まるでもう戦ってきた後のようだ。大丈夫ですか? 棄権してもいいのですよ。できるならね」




「だまらっしゃい!」




「だま……らっしゃい……!?」




「こんなところで棄権なんてするかよ! だが貴様の言っていることはひとつだけ合っている……それはもう戦ってきた後のようだってとこだ。そのとおり……俺は戦ってきた!




 ――そう、こいつらとな」




夜空に浮かぶ水沢とPYの顔。お前らの敵は私が討ってやる。




「そうですか。なるほど。どうやら僕はあなたという人間を見くびっていたようです。いいでしょう。チームで戦ってきたというのならこの僕も同じです……!」




「うっ……!」




物腰柔らかく、静かに微笑む今村の背後に燃える木下と川越の幻影。




なるほど……お前も同じだってのかよ!




そうして最終決戦が今ここにはじまる――。




結果:勝ちました。










※実際の様子はこちら!↓








※原稿はこちらで読めます!↓





西軍 https://note.mu/palmtone/n/nc60afebeb320




東軍 https://note.mu/palmtone/n/nefa021cbcc41







2019.3/16に第二回ショートショートバトルが行われました。その模様はこちら

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