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公開日: : めろん。

meron

 普通の若者ならば「何故自分がこんな目に」とでも思うのだろうが、芝咲の場合は違った。なんとも思っていないのだ。


 他人への関心のなさがそのまま彼の性格に反映されている。


 なにに置いても無関心。それが自分のことであっても。


 そんな彼がそもそも営業職など向くはずもないが、彼にとってはそれまでも無関心、どうでもいいことなのだ。


「うちは健康だから」


「セールスはいらん」


「消えろ」


 しかし、このような反応を訪問先の客に言われても動じないのは案外強みか。


「こんにちは。エブリーワンの芝咲と申しますが、健康グッズのおすすめにまいりました」


 この謳い文句がそもそもの成績の上がらない原因かもしれない。


 インターホンの向こう側は無言を決め込んでいる。


 当然、それも日常風景の一つであって、芝咲には慣れたものだ。


 30秒ほど待って返事が無ければ隣の部屋に移ろう。そう思いながらドアの前で待っていると、鍵の廻る、解錠音が鳴った。



 ほどなくして玄関が開いた。この日、片手の指で数えれるほどの芝咲の話を聞いてくれる”お客様”だった。


「どうも、おくつろぎ中に失礼いたします」


 普通ならば”お忙しい中失礼いたします”というのだろうが、ドアを開いた女性の恰好を見て芝咲は”おくつろぎ中”という言葉を選んだ。


 玄関を開けた女性は上下のバランスのおかしな服装だった。


 上着は襟のついたシャツを着ているのに、下は3本ラインの入ったよくあるジャージ。


 俗に言う”部屋着”という恰好だった。


「……ろん」


「はい?」


 女性はニコニコと笑いながら何か言ったが芝咲にはよく聞き取れなかった。


「……」


 そんな芝咲を無視して彼女はドアをいっぱいに開けると空いているもう片方の手を部屋の奥へ指し、”どうぞ”というジェスチャーをとった。


「よろしいんですか? ではおじゃまします」


 部屋に入れて話を聞いてくれる客は彼らの仕事にとってはこれ以上ないシチュエーションだ。


 さすがの芝咲もこれには少し興奮した。


(これは期待できるかもしれない)



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