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【連載】めろん。75

公開日: : 最終更新日:2021/01/12 めろん。, ショート連載, 著作 , , , ,






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・破天荒 32歳 フリーライター⑰




 ギロチンのメモ画像を隅から隅まで何度も読み返した。




 鬼子村に関しての記述がやはり引っかかる。〝本来、子供しかかからない〟、それがなぜ大人に伝染したのか。




 いや、違う。もしかするとこういうことかもしれない。




 私はひとつの仮説を立てた。




 鬼子村は鬼子がわかればすぐに殺していた。それがなにかのトラブルが起こり、鬼子が望みどおりに親を食い殺した。そこから鬼子が爆発的に発症するようになった。そして、鬼子村の由来となった……子捨て村、すなわち子供だけの村になった。




 問題はそこからどうなったのか、だ。




 この施設はそもそも鬼子村があった土地にある。めろん発症者を隔離するにしたってなぜわざわざこんなところに……。




「あれ? そういえば鬼子を捨てた村の大人たちはどうなったんだっけ」




「ちりぢりになった。故郷を失ったわけだからな、それぞれが好きなところに移り住んだらしい」




「その親たちって今――」




 坂口が咄嗟に振り返った。指を立て、口に当てている。それ以上はやめろ、ということだ。これはここにおいての禁句ととった方がいいだろう。




 私はPCのテキストを開き、画面上にテキストを打ち込んだ。




『バラバラの地に移り住んだ親たちが、ふたたび鬼子を産んだという可能性は?』




 坂口はぴくり、と肩を震わせた。そして、キーボードに指を躍らせる。




『ある。俺はそれがめろん発症の真相だと踏んでいる』




 ――やはり。




 胸の中で疑念が確信に変わろうとしている。そして、この施設の存在理由についても。




『ここは新しい鬼子を外にださないための施設。あくまで憶測だけど、公安を動かせるほど力を持った人間の血族に鬼子村に子供を捨てた親がいたんじゃないの? そして、その親は町でふたたび鬼子を産み落とした』




 驚いた顔で坂口はこちらを向いた。




『それは極端な論理だ。だが』坂口はテキストでそこまで打ち、




「ないとは言い切れない」




 と声を出して答えた。




『鬼子が明るみにでると困る人間がいるに違いない。実際、私も広志から聞くまでめろん病なんて聞いたこともなかった。だけどこれはなにか大きな力が箝口令を敷いていると考えたなら不思議じゃない』




『それが警察組織だというのか』




『もしくはもっと上……』




 国がかかわっている……かもしれないと思った。




 坂口はそこまでのやりとりで顎を擦りながら考えに耽る。そうして、しばらくしてから再びキーボードに指を置いた。




『鬼子村では、鬼子を発症した子供を殺して親が食った。そして鬼子が増えるようになったのは鬼子が親を食ったからだ。考えるべきはふたつ。ひとつは鬼子(めろん発症した子供)を未発症の親が食えばどうなるのか。もうひとつは――』




 鬼子村に置き去りにされた鬼子たちはその後どうなったのか?




『すくなくとも全員死んだ、ということは考えにくいと思えないか』




 普通に考えるならば生活力のない子供だけが村に残されたとするのならば、さまざまな理由で死んだと捉えるのが自然だ。




 飢餓、病気、獣害、そして……共食い?




『鬼子たち……つまりウェンディゴ症候群のような疾患を発症した子供が、仮にほかの子供を食べたとして、普通はそれで病は不治になるよね?』




『今となにかが違うのかもしれない。昔の鬼子は一度相手を食ったからと言ってそれきりというわけじゃ……』




 坂口がハッとした。表情が一変し、青ざめる。




『めろん村はそれの再現のために造られた可能性がある』




「どういうこと?」




 思わず声をだして突っ込んだ。




「つまり――」




 カタカタと研究室に打鍵の音が響き、打ち終わった坂口が私を見た。それを読んだ私もまた坂口と顔を見合わせる。




『鬼子村で鬼子たちが起こしたなにかを再びここでやろうとしている』




「……〝なにか〟って、なに?」




 坂口はわからない、とばかりに首を横に振った。そして、眠っている檸檬ら子供たちを見た。




「広志に知らせなきゃ……」




「村に入るつもりか、死ぬぞ」




「だけど、ここからじゃ連絡の取りようがない」




「奴が生きている保証もないだろう」




「行く!」




 私の決意は固かった。坂口は性格に難ありだが信頼できることはわかった。だからこそ、ここで檸檬と理沙と一緒にいてほしい。私ひとりならば、最悪のことがあったとしても――




「蛙子ちゃん、私も行く」




 後ろから檸檬が強い口調で入ってきた。




「なに言ってんの、危ないから……」




「ううん。わかってるもん、私危ないってことわかってる。でも理沙のためだから」




「だめよ檸檬、あなたにもしもなにかあったら取り返しがつかない!」




「絶対にいく! 蛙子ちゃんひとりより絶対に役に立つから!」




「はっははっ」




 困り果ててにらみ合う私たちの間で坂口が笑った。




「な、なに? っていうかあんたも笑うのね」




「これがおかしくなくてなんだというんだ。……よろしい、俺も行こう」




「はあ?」




「その代わり、妹のほうもだ。4人でいく」




「なに勝手に決めてんのよ!」




「それが一番安全だというんだ。ここに子供だけを残しておけないし、だからと言って俺が子守りをするのもごめんだ。俺が行って君らを残しておくという手段もあるが、誰かが来た時にかばってやれない。だから4人で行くしかない」




「でも理沙は……」




 めろんを発症している。仮に私たちの身になにも起きなかったとしても、理沙がめざめると危険だ。




「だから俺がいるんだ。それに村のことは俺がよく知っている」










めろん。76へつづく

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