グリーンインフェルノ / 食人族 レビュー
■有言実行の最東
どうも最東です。
みなさん覚えておられるでしょうか。当ブログでご紹介したかのPOV方式の
パイオニア的作品で、歴史的大傑作(やや誇大演出)ホラー映画『食人族』の超絶リメイク
さてさて、早速感想を……といいたいところなのですが、地味にこの映画を観るのにとある情報に驚きました。
この映画は、恐らく倫理的観点から恐ろしく上映館が少ないのです。
私は関西に住んでいるのですが、関西全域で僅か4館でしか上映しておらず、封切初日から公開しているのはたったの一館。
それ以外はなんと数カ月後に上映予定のものや、『一週間限定上映』。
更にすごいのは『一日限定上映』というものまでありました。
ある意味で話題になるのは伺えます。
確かに、2015年末現在。
【人間が人間を食べる映画】というのは、昨今の猟奇殺人や某テロ組織などの報道を見て考えるにこのようにおおっぴらに公開出来ないのは仕方のないことなのかもしれません。
正直、食人族の原作を今映画館のスクリーンで観るかと言われれば迷ってしまいますが。
■そこかしこに見えるコレジャナイ感
リメイク映画ではもはやあるあるの一つとなってしまいましたが、この映画についても【コレジャナイ感】は激しくありました。
もちろん、原作を知っている、原作が好きだという所謂【原作厨】が主にこれを叫ぶことはわかっています。
ですが言わせてください。
【これじゃない】んです!
まず、大きく違うところが今作がいい意味でも悪い意味でも『映画である』ということでしょう。
原作の『食人族』も映画なのですが、内容はフェイクドキュメントなる手法を用いられており、さも「本当にあったことなのかもしれない」という錯覚というかリアリティが売りでもあります。
そしてそれを有効的に用いられたのがカメラ目線で物語を追っていく【POV方式】なのです。
しかし、今回のグリーンインフェルノはそういった方式ではなく、【普通の撮影方式】で撮影されていて、そういったリアリティが希薄になってしまいある種生々しい恐ろしさが削がれてしまったように思えます。
■残酷描写
さて、お待たせしました。食人族といえば、食人描写です。
これはどのように進化したのでしょうか。
イーライ・ロス監督らしい派手な死に方をしてくれる人々が多く、概ね満足できるレベルではないでしょうか。
……普通のホラー映画なら、ば。
今作はかの悪名高き『食人族』のリメイクなので、今作を好んで観に来る層(前述の通り今作は必要以上に上映館が少ないので映画館で観るのはそこそこ大変です)が、まともなホラーを期待しているはずがありません。
とにかく凄惨で惨たらしい食人描写を期待しているのです。
そういった意味では、最初の犠牲者が食べられる描写はそれはもう素晴らしいものでした。
無慈悲で残酷、容赦のない人体解体の描写は『食人族』を観に来たのにだらだらと関係のないシーンを垂れ流された私達を大いに期待させてくれたものでした。
ですがその後の展開は、無関係な美女の脱糞シーンや滑稽な伏線描写など無理矢理映画としての意味を持たせようとしているのが見え見えで、その後に続く食人シーンも最初の犠牲者を超える山場はありませんでした。
間接的に怖い。生理的に怖い。などバラエティに富んだ恐怖感を煽ってくれましたが、食人族で別にそれを求めていないというのが本音です。
喰え! もっと喰えよ!
今回は特に『食人エンターテイメント』を詠っているだけに、正直拍子抜けでした……。
映画自体は面白かったとは思うのですが、如何せん『食人族』を求めていくとすこし残念な気持ちになっちゃうのではないでしょうか……。
■ストーリー
先ほども触れましたが、今回はドキュメンタリー風ではなくゴリゴリの映画です。
そのため娯楽作品としてのストーリーもしっかりとあります。
ですが、やたらと長々学園生活が描かれるだけで中々ジャングルに行ってくれず、妙にだらだらとした展開が続くのです。
しかも、至る所にチープなところも目立ちました。
意識高い系の学生たちが「自分たちが世論を変えるぜ!」とチェ・ゲバラにでもなったかのようなカリスマ生徒。
なにを勘違いしたのか、「森林破壊によって滅びる運命にある少数部族『ヤハ族』を守ろう! それができるのはおいらたちしかいないぜ!」とばかり勘違いして、森林伐採工事を止めに行くまではいいのですが、帰りの飛行機が事故に遭い守ろうとしていたヤハ族にとっ捕まって食べられるというトンデモ展開でした。
ストーリーのチープさに文句を言うつもりはありません。
ありませんが、元がストーリーなど有ってないようなものだっただけに中途半端なストーリーを足されると微妙です。
しかも、『食人族』ではなく『人喰い族』の方をリメイクしたとしか思えないストーリーで、最後に女子大生が一人だけ生き残り、さらに一番の憎まれ役が殺されないといったテーマもなにもない軽い仕様。
ストーリーもこんな感じですが演出としても詰めが甘く、ヤハ族はどう見ても役者の集団で髪はさらさら、金髪っぽいメッシュの入った子供もいて先住民とはとても思えない印象しかありませんでした。
また、マリファナの煙を吸わせて先住民を眠らすという描写がありましたが、あまりにもバッタバッタと倒れすぎて現実味がなく、コメディと取ればいいのか真面目だと取ればいいのか困惑するシーンも多くあります。
ですが、今作はB級としてはとてもよくできていて、気になるところは多いもののハズレというほど面白くないことはありませんので、一度ご鑑賞してみてはいかがでしょう?
ラストの伏線は全くいらなかったですが。
★★☆☆☆
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