世界の葬儀
■埋葬と火葬。国によって違う葬送儀式
どうも最東です。
前回の記事で映画『食人族』についてご紹介したこともあって、世界各国の風習について興味が沸いたので少し調べてみました。
実際に食人文化のあったという部族もありますが、これについても二通りの種類があるといえます。
一つは、純粋に食文化としての食人。
もう一つは、葬送風習としての食人です。
前者は部族以外の人間を食糧として食べる、というものですが後者は部族内の身内が死亡した際に、弔いとして故人の肉を食べるというもの……。
どちらも恐ろしい風習のようにも思えますが、文化と価値観が違うだけで当事者にはおぞましくもなんともないことなのでしょう。
日本でも遥か昔、生魚を食べる刺身という料理は海外の人間からすると常軌を逸していた食文化だと言われていましたし、武士道精神に乗っ取った切腹という自殺行為も実に理解しがたいものだったといいます。
というわけで、どの部族でどのような風習があったところで私達も人のことを言えないというわけです。
しかし、文化や価値観が違うものを恐ろしいと思うのは、抑えようとして抑えられるようなものではないはず。
特に葬送儀式は国によっても違います。日本は火葬が主流ですよね、火で焼かれた遺体は骨となり、小さな壷に収められ墓に納骨されます。
一方で欧米諸国ではいまだに埋葬が中心で、ゾンビブームなどはこの埋葬文化から生まれたといっていいでしょう。
日本で火葬が主流なのは色々と理由はありますが、理由の一つとして他の大陸と違い、小さな島国である日本で埋葬をすると土地がなくなってしまうからです。
もしも日本に埋葬文化が今でも根強く残っていたら、そこら中骨の埋まった土地だらけになっているかもしれません。
■葬送は静かに? 賑やかに?
さて、欧米諸国と日本との葬送儀式の違いは前述の通りですが、冒頭にご紹介した食人文化……というごく一部の限られた地域にだけ残る個性的な葬送風習もあります。
探してみると色々とあるようで、大別すると風習によって『死者をしめやかに送る』か、『死者を賑やかに』送るかという違いでえらく変わるようです。
道徳的に身近な人間が死ぬということは悲しいことではありますが、それは生者が死者に会えないというだけです。
風習によっては『死者は神の元へ行く』と信じられており、むしろめでたいことだという意識のところもあるのです。
一方では「死者はただただ無に帰すのみである」とするところもあり、野生の動物に死者の肉を綺麗に食べてもらうという葬送風習もあるといいます。
では早速、その中からいくつかをご紹介しましょう。
■様々な葬送風習・儀式
・風葬
人気TV番組『クレイジージャーニー』でも【奇界遺産】の著者佐藤健寿氏が取材したことで話題にもなったインドネシアのとある村に伝わる葬送風習。基本的にどの地域の風習であっても死者の遺体は日本の火葬も含め、出来るだけ早く処理する方法が好まれます。
この理由は様々伝染病や腐敗した死体が散乱するのを予防するためです。
その概念から真っ向から立ち向かうのがこの風葬。死体をそのまま野ざらしに放置し、自然に朽ちてゆくのを待つという葬送風習であります。
この風葬には死者を放置する場所が決められており、死者はそこで数か月白骨になるまで風葬がなされます。そうして白骨化した死者は、洒落頭をこれまでの死者のしゃれこうべが並ぶ場所へ、新しき並べられるのです。
放置され、腐敗していくのにも関わらずこの風葬場は不思議と異臭・悪臭はしないといいます。神秘的ですね。
・鳥葬
チベットに伝わる有名な葬送風習です。死者の肉を剥がし、野ざらしにして神の使いといわれているハゲタカに死者の肉を綺麗に食べさせるという葬送風習です。
全てのものは自然に帰るという考えと、日本で言う火葬的な「死者を手早くコンパクトにする」という両方の意味において実に合理的な葬送手段ではないでしょうか。確かに葬送風景はグロテスクではありますが、埋めるだけ、焼くだけの弔いよりも自分が地球の一部になっているというある種神聖な気持ちにもなるのは私だけでしょうか。
当然ながら日本では到底法律的にも人道的にも許されない葬送風習ですが、チベットではポピュラーな葬儀ということです。
【閲覧注意!死体解体シーンがあります】
・自由葬の可能性
ここまでは世界の風習としての葬送儀式をご紹介しましたが、これはそれとは随分と趣が違います。近年、葬送儀式も自由や個性を重要する人たちが増え、生前葬などというものまで生まれました。
そういった意味では変わった部類にあたるこの葬儀を『プロデュース葬』というそうです。日本で言う葬式は、当然ながら世界各国である儀式です。この儀式には必ず棺桶があり、その中で静かに死者が眠っているのです。
ですが、そういった既成概念を打ち崩してしまうのがこのプロデュース葬と言えるでしょう。ニューオリンズで50代の女性が亡くなりました。彼女の死を悼んだ二人の娘が、生前の母を想い、母の好きだった『ディスコ』を模した葬式にしようと決めたのです。
葬儀会場をディスコ会場に見たて、母の死体をテーブルに座らせると火のついていないタバコを手に持たせ、缶ビールをテーブルに。死体の顔にはサングラスをかけ、パッと見て彼女が死んでいるなどと誰も気付かないよう徹底的にディスコ感を出したのでした。
そこには牧師も、棺桶もなくただ賑やかなディスコ会場とそれに興じる弔問客。一見異常にも見えるこの光景は、新しいタイプの葬送儀式ではないでしょうか
■自分の死後、遺った者たちにどうされたい?
日本の風習に倣って火葬もいいでしょう。というより、このまま自然に寿命を迎えれば必ず火葬されます。
ですが、風葬の参考にさせていただいたブログには、村の少年の言葉が記されていました。
「自分もこんな風に風葬されたい」という少年に対し「何故?」と聞いたところこう答えたそうです。
「だって、愛する人が死んだことをちゃんと確認し続けられるじゃないか」
日本のように「死んだらすぐ焼いて終わり」という葬送より、風葬が残酷だという人もいるでしょう。
ですが、人の死とは身近な人間ならば身近なほどすぐには受け入れられないもの。
こうやって、ゆっくりと人の死を受け入れられる方がよほど人道的なような気もしてしまいます。
鳥葬のように自然に還るのもひとつ、ディスコ葬のように生きたままの死者と過ごすのもひとつ、風葬のように骨になっても愛した人に会いに行ける葬送もひとつ。
貴方はそれでもその身を焼かれたいですか?
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