サンディフックの悪夢 / 26+1
■とある男児
まだ五歳のローガンは、入学したてのサンディフックスクールに行くのを嫌がった。
というのも、彼が学校に行くと必ず騒ぎを起こすのだ。
ローガンの両親は、それに対して非常に気を揉んでいた。
なぜなら、ローガンにはそういったパニック症候群はおろか、これまで通った幼稚園でもそんなことを起こしたことなどなかったからだ。
彼が起こした騒ぎとは一体何なのか?
校内で活動していると急にパニックになるというのだ。
前述の通り、彼は特にこれまでそういったことはなく、両親は突然発症したその症状にただ戸惑ってしまった。
そういったパニック症候群やその類の病を疑われるも、彼らからすればこれまでなかったことだったので、にわかにそのようには思えない。
一週間ほど経ち、時間が解決してくれると信じていた両親も、一向に収まる様子のない我が子を遂に病院に連れていくことを決めた。
■医師の診察
病院に連れていき、ローガン少年は診察を受けた。
こういった症状で初めて診察を受けさせることとなった両親は、特に心配しながらどのように診断されるのか、死刑判決を待つ囚人のような気持ちで待った。
それもそのはずである。
これまで全くの正常だった我が子が、スクールが変わっただけで異常者のような扱いを受けているのである。
突然あらわれた症状だ。
なにかとんでもない病気になっているに違いない。もしかしたら精神的な疾患なのかもしれない。
だが、医師の診断結果は意外なものであった。
「特に異常はない。全くの正常だが、なぜそんなことになるのかわからない」
ということ結果だ。
――医師にも分からないとははどういうことであろうか。
■懸命に登校させようと試みる
至って正常――。
その診断を受けた以上はローガンを登校させないわけにはいかない。
両親は、懸命に嫌がるローガンをスクールへ行くようになだめる。
だがやはり、学校に行くことを嫌がり泣きわめくローガン。
こうなってしまったローガンは必ず毎回、同じことを繰り返し泣き叫んだ。
「やだやだ! 怖いよ、スクールは怖い! 安全じゃないもん!」
と。
すっかり困り果ててしまった両親は、その入学して二週間目のとある日、ローガンを休ませることにした。
■サンディフック小学校
ローガンがスクールを休んだその日。
2012年12月14日。時刻は9時35分だった。
サンディフックスクールは幼稚園部と小学校部を併設しているスクールで多くの児童たちがここで授業をしていたり、遊んでいた。
この時刻といえば、児童・生徒がほぼ全員校内にいたであろう。
そんな何気ない日の何気ない時、20歳の明らかにスクールの関係者で無いであろう若者、アダム・ランザという青年が訪れた。
すでに授業が始まっていたスクールは静かで、ひと気がなかったらしく彼の侵入を容易く許したのだ。
彼の手には自動小銃2丁が握られていた。
校内に侵入したアダム・ランザはその自動小銃を容赦なく児童たちに発砲。
■悪夢
その後、10時00分には死亡者の数が明らかにされた。
教員など成人女性が6名、女子児童が12名、男子児童が8名。
26名の命が非情の銃弾に奪われ、そして成人男性1名の死亡が併せて伝えられた。
成人男性1名の死亡、それが銃を乱射し26名の命を奪った犯人・アダム・ランザ本人であった。
これは後に『サンディフック小学校銃乱射事件』として、バージニア工科大学銃乱射事件に次ぐアメリカ銃乱射事件史上最悪の死者数を出した事件となった。
■アダム・ランザ
犯人のアダム・ランザは地元では優等生で前科もない普通の青年だったという。
だが彼の自宅には、事件時に所持していた銃とは別に3丁の銃、槍やサムライ・ソードといわれる日本刀を模した刃物など12本の刃物、さらに1600発以上の実弾があった。
これらの凶器は、全てアダムの母親が買い与えたものであることが後に判明した。
しかし、この日に見つかったのは武器ばかりではない。
一体の銃殺死体も発見されたのだ。
それが、アダムの母親である。頭部を撃ち抜かれて死んでおり、事件を起こす直前に殺害されたことが明らかになる。
この悪夢のような事件は、当時の大統領バラク・オバマ氏も哀悼と再発防止に全力を挙げる決意を表明し、罪のない子供立ちが犠牲になったこの事件に涙した。
■事件を予言したローガン少年
事件後、ローガン少年の母親カレンは、ローガンがこの事件を予知していたのだと話す。
その証拠とばかりに、ローガン少年はこの事件の後パニック症状を起こすことは無かった。
だが、母親のカレンは振り返る。
我が子が助かったことには、神に感謝しているものの我が子が通っていた児童たちがなぜ無残に殺されなければなかったのか。
アメリカの銃社会の闇がまた露呈された結果になった。
(※写真は、当時NYタイムズのサイトに記載された当事件の犠牲者リストである。犠牲になった児童の年齢が事件への怒りと憎しみを灯すのではないだろうか)
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