角川三賞受賞パーティー2017
■あれから一年
どうも最東です。
最近は『【夜葬】病の章』しかブログで更新していないので、この挨拶もずいぶんとお久しぶりな気がしてきました。
しかし、病の章のほうもようやく完結が見え始めてきた頃なので以前と同じ〈隔週で短編小説とホラー記事やレビュー〉という形式に戻そうかと思ったのですが――。
Twitterにてアンケートを実施したところ『とりあえず完結したら新しいホラー書きやがれワックMC!』と結果がでました。
そういうわけで病の章が完結したら新しい小説書くのでワック(ダサイ)とか言わないでくれよ《コンプラ》!!
おっと、そういった近況の報告はこのくらいにして、角川三賞贈賞式&祝賀パーティーに出席してきたのでそれのレポートを。
昨年、2016年度の同パーティーには受賞者として出席したのであれから一年が経ったのですね。
実に早いものです。
そう、私も作家としてデビューしてから一年が経ったということ。思い浮かぶ幸せな日々……(没になった思い出。丸々書き直しになった思い出。封印になった思い出。Etc)
ヒ、ヒィッ! オクレ兄さん!(発作)
そういうわけでこの世界は甘くない。小童の分際で作家ヅラすんなメーン。
と絶賛洗礼――否、試練を受けている最中です。
そんなこんなでようやく私にも直接の後輩ができるということでwktkしながら帝国ホテルに突貫してきました。
■今年の受賞者
さて、今回の日本ホラー小説大賞ですが残念なことに此度も大賞はでませんでした。
もともと難関で大賞が二年に一度しかでないとまでいわれている賞です。私の年にも出ていないので、大賞が二年連続でていないということになります。
しかも、今年は横溝正史ミステリー大賞や必ず大賞がでるといわれていた江戸川乱歩賞、そして日本ホラー小説大賞。
軒並み大賞なしといった年になりました。
しかし、大賞こそでなかったものの日本ホラー小説大賞に関しては受賞者が3人でました。
私の年と比べて1人多いので、実感的には今年のほうが豊作なのではという感覚です。
実際、今年の日本ホラー小説大賞のスピーチをされた貴志祐介先生はスピーチの中でこうおっしゃっています。
「今年は不作の年だと言われているが、そうは思わない。むしろ豊作だと思っています」
今回、受賞した三作品はすべて読ませていただきましたが、確かに同じように思いました。
順位はつけがたいものの、私は中でも『迷い家』は特に面白く読ませていただいたので、これが大賞じゃないなんてなんて厳しい世界なのかと再認識しました。
今年の日本ホラー小説大賞受賞作は以下の三作品。
- 優秀賞
『迷い家』 著:山吹静吽(霞澄晴吽改め) KADOKAWA単行本
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『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』 (「文字列の幽霊」を改題) 著:木犀あこ 角川ホラー文庫
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- 読者賞
『ハラサキ』(「竹之山の斜陽」を改題) 著:野城亮 角川ホラー文庫
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どれも甲乙つけがたい傑作です。
特にこの中では『ハラサキ』には強いシンパシーというか、共鳴するものを感じています。
というのも、私が昨年受賞したのも【読者賞】であり、『ハラサキ』も【読者賞】です。
同門でありながら、受賞した賞も同じ。
それだけでなく、日本ホラー小説大賞では【読者賞】で直球のガチンコホラーで受賞するのは珍しく、私の『夜葬』からその系譜が受け継がれたようでとても嬉しかったのです。
パーティー会場で、受賞されたお三方にもご挨拶したのですがみんな私のことを知っていて非常に恐縮でした。
『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』の著者、木犀あこ先生には「夜葬のファンなんです!」とまで言っていただいて、ニヤケ面を押さえるので精一杯でした。(隠しきれていないという説があります)
お三方のスピーチは三者三様で、個性のある方ばかり。
それを今回は客席で見ながら、「去年のスピーチ、滑ったな……」と猛省しました。(『ヒストリア』で山田風太郎賞を受賞された池上永一先生のスピーチが面白すぎて嫉妬)
■冷酷非道な担当氏その1
授賞式では各先生のスピーチを楽しみつつ、舞台は祝賀パーティーへ。
去年は、ひっきりになしに色々な方々からご挨拶をいただき食べる暇がありませんでしたが、今回はもう余裕綽々。
カレーにローストビーフ、寿司に天ぷら……あとは名前もよくわからない庶民には過ぎた料理がずらりと並び、ヒャッハァー! 水に魂を奪われるな、英雄の館で俺は生き返る! とばかりに食らいつこうと決めていました。
しかし、会場には去年ご挨拶した方々がちらほら……。
ここはやはりこちらとしても挨拶まわりをば、と考え単身特攻するよりも担当氏にやんわり「去年のどんぶりさんの人です」と紹介してもらう算段をたてました。
そこで担当氏を捜したところ……。
ご歓談中。
「どうもー」
とやんわり「俺、来てるよ。俺を見ろ」と意思表示したのですが半笑いで会釈されたのみでした。
ぐっ、忙しいのかよ!
仕方なしに担当氏の手が空くまでできるだけ自分ひとりで行ってみることに。
■念願の宮部みゆき先生
昨年、受賞した際に選評をくださった先生方(綾辻行人先生、貴志祐介先生、宮部みゆき先生)の中で、宮部先生だけがパーティーに出席されていませんでした。
綾辻先生と貴志先生にはご挨拶できたものの、宮部先生にはお会いできなかったので今年こそは! と意気込んできました。
色々な方々とお会いするのは楽しみでしたが、今年の一番の目的は宮部先生にご挨拶すること!
く、くそぅ……! それなのに担当氏めぇ、ウォーボーイズの風上にも置けねぇ……!
と、まぁそんなことで腰を引けていてはしょうがありません。
会場を捜して、見つけました! 宮部先生!
「あの、宮部先生!」
初対面でいきなり話しかけてしまったので、宮部先生は少し面食らった様子でした。
くっ、ひと笑い掴むべきだったか!
後悔先に立たずというわけで、「去年の読者賞を獲ったどんぶりさんの……」とそこまで言ったところで宮部先生は笑顔を浮かべてくれました。
「ああ~! もう、あなたのせいでひどい目に遭ったんですよ!」
「What!? マイケル」
「あんな怖いの読まさせられて、私ガラケーからスマホに替えられないじゃないですか」
ぶわわっ!(by鋼鉄郎)
「いやいやいやいや! そそそそんな! 僕は宮部先生の選評にすごく勇気づけられてあのあの……」
と光栄と歓喜と緊張のあまり会話が噛み合わない事態に。
実に気さくでフレンドリーな宮部先生はその後もにこやかにわたしのようないち新人と話をしてくださいました。念願叶ったり!
その後、綾辻先生や大森望先生、澤村伊智先生、堀井拓馬先生、岩城裕明先生、織守きょうや先生、白井智之先生と錚々たる面々ともご挨拶させていただきました。
さらにさらに!
「あ……鈴木光司先生だ」(心の声)
目が合う。
「きゅんっ! なにか喋んなきゃ!」
昨年、大先生は数多くいらっしゃいましたが、さすがの私でも鈴木先生に突貫するのは畏れ多くてできませんでした。
しかし、目が合ってるのに逸らしてローストビーフにがっついてしまっては、みすみす武器将軍を見逃すようなもの。
意を決して私は話しかけました。
「はじめまして! わたしは昨年、日本ホラー小説大賞で読者賞をいただきました最東対地と申します!(転校生のような緊張感)」
「ああ、どうも知っていますよ。はじめまして、だったかな? 去年喋んなかった?」
「あ、いえ! お見掛けはしたのですがご挨拶までできませんでして、すみません」
「いやいや、いいんだよ。はっはっはっ」
うっわーー! リングの人だよー! 仄暗い水の底からの人だー! ←心の声
そしてまさかの名刺交換。私の名刺ブックに【鈴木光司】の名が並びました。うひょー!
ホラー小説界のレジェンドですよレジェンド!
正直、今年のパーティーは私が受賞者ではないのでここまで幸福な経験ができるとは思っていませんでした。
最高の日――否、なんてラブリーな日だ!(興奮気味)
■冷酷非道の担当氏その2
さて、私には付き合いの古い作家仲間がいます。
名は大城密。
今回のパーティーは終始彼と行動を共にしていました。
とは言え、挨拶回りの際は前述の通りひとりで回っていたわけですが、なかでも鈴木光司先生とお話している時、彼はすぐそばにいてぷるぷるしていたようです。
「お前、よく鈴木先生に自分から挨拶できるね」
事後、彼はそう言ったものです。そして私はそれについてこう答えました。
「担当氏が全然紹介してくんないからだよ……(ニヒルな笑み)」
大城密と私はなんの因果か同じ担当氏ですので、共通の知り合いでもあります。
それを踏まえて彼はこう言いました。
「いやー、最東ってそういうの(営業的な)得意だってわかってるから放っておいてるんじゃない?」
「いやいやいや、そんなことないやろ! いくらなんでも俺、まだ新人やで? そんな新人にひとりであちこち行かさんって。たぶん、忙しいんちゃう。角川主宰の大きいイベントやし」
この時、私は心からそう信じていました。
しかし、この後の二次会で担当氏本人から驚愕の事実を聞くことになるのです。
「そういえば担当氏、忙しかったんですか」
「まあ、そうですね。忙しいといえば忙しかったですよ」
「でも結構、去年に比べてリラックスしてそうだったじゃないですか。最東が悪口言ってましたよ、「全然構ってくれないからひとりで挨拶行かなきゃいけないって(大城)」
おいおいおい! なに言うてますのん! 言わんでええことをこのちんすこうがぁ!
「いやぁ、最東さんってフットワーク軽いから放っておいても大丈夫かなって」
事実でした!(血涙)
■まとめ
とそんなわけで今回の角川三賞受賞パーティーも随分と愉しく過ごしました。
去年は楽しむどころではなかったのもありますが、やっぱりパーティーは招待されるに限りますなぁ。(なにか賞を獲りたくないとかそういうわけではない)
毎年、文芸公募賞から数多くの新人作家が排出されます。
近年web小説投稿サイトが台頭してきていることもあり、作家単体の数は増えているといえるでしょう。
それでもこういった華やかな場に立つと、厭でも文芸界をもっともっと盛り上げたいと思ってしまうものです。
恐らく、なにもなければ来年も出席すると思いますが各出版社関係者の方や、先生方。書店員のみなさまにお会いして恥ずかしないくらいに、活躍しなければ! とますます気持ちが強くなりました。
きっとこのパーティーとはそういう面もあるのではないかと思うのです。
改めて自分の立ち位置や、存在意義を確かめる場……的な。
あと、やっぱり料理は最高においしかったです。
最後になりましたが、受賞された山吹静吽先生、野城亮先生、木犀あこ先生、おめでとうございます!
追い抜かされないよう私も精進しなければ! V8を讃えよ!
最東対地
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