呪いアプリ / 連続小説
公開日:
:
最終更新日:2014/04/23
ショート連載
■奇妙な噂
呪いのアプリというのが最近流行っているらしい。
スマホを持っている人なら誰でも簡単にダウンロードできるって。
ただ、リンゴのマークのあれはダメなんだって。
なんでかって言うと、アプリが公式ではないからだそう。
そんなことよりもなんでそれが流行っているかっていうと……。
まず、何種類かあるSNSの中から自分がアカウントを持っているものを選択する。
そして、アカウント情報を同期したら自分のアカウントの友達から呪いたい人を選ぶんだって。
私はそこまで聞くと話を続けようとする友達を止めた。
■呪いを確定させると……?
ホラーや怪談がそもそも苦手なんだよね。
それに呪いたい人間なんて別にいないし。
確かに流行ってるから気にはなるけどさ。
『ピンポン』
私の持ってるスマホにメッセージが来た。
『あなたへの呪いが確定されました』
はあ!?
送り主は呪いアプリを教えてくれた友達本人だった。
意味が分からず呆然としていると、すぐにウサギのカワイイスタンプが届き、さらに続いて
『あんたが怖がってるの見て面白くなってつい呪っちゃった♪』
と来た。
なに?! 悪ふざけで呪ったっていうの!!?
『あんたも呪いアプリやりなよ。どうせそんなんでどうにかなるわけじゃないしぃ』
そのメッセージと一緒にダウンロードページのURLが貼ってあった。
■仕返しは呪いアプリで
来た時は彼女の悪ノリに腹が立ったけど、なるほどこんな風に使えばジョークとしては面白いかも。
そう思うとこのアプリが流行っている意味が少しだけ理解出来た。
つまりネタってことでしょ?
私は貼ってあったURLをクリックし、ダウンロードページへと飛んだ。
【のろいアプリ】
ポップなカラーに可愛らしいドクロのゆるキャラ。しかも【呪いアプリ】という記述かと思っていたから、
ひらがなで【のろいアプリ】とあるとは思っても見なかった。
これは完全に確信犯だ。
はじめっからジョークアプリとして作ったんだ。
『だうんろーど』と書かれたボタンを押すと、ダウンロード確認のボックスが出た。
【非公認の個人が開発したアプリケーションなので、ダウンロード後なんらかの不具合があっても責任は持てません。もしも不具合があった場合はアンインストールを実行すればほとんどの問題は解消されます。理解された方のみ「はい」をクリックしてください】
前になんかの占いアプリをダウンロードしたときも同じような確認文を見たことがある。
特に難しいことは考えずに私は「はい」をタップし、ダウンロードページへと進んだ。
■意外と楽しいアプリにハマる
ダウンロードすると、【アカウントを同期しますか】と出てきた。
複数のアカウントの情報を共有できるみたいなので、とりあえずやってみた。
「おー! すごいすごい」
画面にはアカウントに登録している友達が小さなドクロのマスコットにリボンや色が違うアレンジを施したアバターになっていた。
「なにこれすっごいかわいいじゃん」
スライドさせると次のページに以降し、それぞれ下に名前が書いてある。
それをタップすると、その友達のプロフィールページになり、
【この人を呪っちゃう!】
のボタンが出現する。
「あはは、なにこれ!? おもしろ~い」
とりあえず仕返しをしようと思い、私を呪った例の友達を探した。
「あれ……?」
その友達のアバターには大きくバツがしてあり、タップしてみると
【そのユーザーは他のユーザーにより既に呪われています】
と出てきた。
「一人につき一人からしか呪われないんだ。ということは、他の人にもう呪われてるってことだよね」
私は少し残念な気分になったけど、他に呪いたい人もいないし、このアプリをやっている人じゃないとギャグだということが伝わらない気がしたので、
誰かを呪うことをこの日はしなかった。
■呪われた友達
翌日、大学に行くと構内が妙にざわついていた。
「どうしたの?」
5人くらいで集まってキャーキャーと騒がしく喋っている友達に話しかけると、
「○○ちゃん、死んじゃったんだって!」
「え……?」
○○ちゃんとは、例の呪いアプリを教えてくれた友達のことだ。
「ほら! これみて!」
5人の内1人が私にスマホのニュース記事を見せてくれた。
【昨日未明○○市に住む大学生○○さんが自宅で殺害されているのが見つかりました。殺害されたのは昨日早朝であると見られ、
鋭いナイフのようなもので全身を数十か所刺され死亡したとみられています】
「死んだ……? 昨日の朝……」
あの呪い通知が来たのは昨日の夜だったはず。
彼女が死んだことに驚くよりも、彼女が死んだという客観的な事実と彼女が死んだあとに届いた呪いの事実がぐるぐると頭を回った。
「呪い……?」
私がそうつぶやいたのを、誰も聞いてはいなかった。
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