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怪談15日戦争で話した最東怪談『雪女』

前回はこちら

どうも最東です。
前回に引き続いて、2025年なんば白鯨で行われた『怪談15日戦争』についてお話します。
後半の今回は主に最東が語った話についてご紹介していこうかと思います。

予選ブロック『雪女』

最東が『怪談15日戦争』でチャレンジしてみようと思ったのは、〝古典怪談をいかに現代風に且つ怖く構成し直せるか〟ということです。
これはすなわち古典怪談を現代怪談の視点で〝再解釈し直す〟作業になります。
ひとまず語る怪談のテーマを小泉八雲の『雪女』にしました。
特に思い入れのある話ではないし、私自身この話をぴくりとも怖いと感じたことがありません。
ただ、古典とはいえ〝怪談〟として語り継がれている物語なので、自分なりの〝怖さ〟をこの物語の中から見つけようと思いました。
これは、準決勝・決勝でも語った他の2つにも共通する最東怪談の柱となります。
まず『雪女』の構造をブロックごとに分解したとき、以下のようになります。
①巳之吉と茂作が吹雪に見舞われ山小屋に逃げ込む
②茂作のそばに白い着物で真っ白い肌の女が息を吹きかけ、巳之吉R.I.P
③「お前は見逃してやるがこのことを他言すれば殺す」と捨て台詞を残し女は去る
④その出来事がトラウマになるがしばらくして旅先で会った女を娶る
⑤10人子供(多い)ができ、幸せを噛み締める巳之吉がのろけでついつい雪女のことをゲロ
⑥嫁がなぜか雪女だった。
⑦「禁を破ったけどお前は真面目で純朴で、尚且つ子供のいい父親だから今回だけは見逃す。でも子供不幸にしたりしたら次はマジ殺す。あ~殺す」と言い残して消える。

ざっとこんな話です。
シンプルですが、現代人の感覚からするとよくわからん話です。主に倫理観というかなんというか。
ともかく、この話の〝怖さ〟は万人が共感するのではないでしょうか。ずばり②~③の山小屋での場面です。
ですが〝現代怪談としての解釈する〟段において、『雪女』のスケアリーポイント(恐点)は序盤な上にここがピークです。
もったいつけたい、ということと、「これが古典怪談である」ということを隠匿するためには序盤では都合が悪い。せめて中盤にもってくるのが効果的である、と考えました。
あと、山小屋の場面……特に巳之吉が死に至る描写はより現代風にディテールをアップしたいとも。
そういうわけで、最東はこの物語を〝巳之吉から聞いた話〟というまさに現代怪談のテンプレの形に落とし込むことにしたのです。
ここで(便宜的に古典再解釈怪談を『最東怪談』と呼びます)、この最東怪談に課したいくつかの制約をご紹介します。
まず、〈物語を改変しない〉。
つぎに〈時代を現代に置き換えない〉。
最後に〈自分の言葉で語る〉――です。

1.物語を改変しない

ひとつめに設定した制約は〈物語を改変しない〉。
私の語りを動画や会場で視聴された方は「改変しとるやないかい! 腎臓と前立腺の位置を入れ替えてやろうか!」と思われるかもしれませんが落ち着いてください。
私はあくまで〝ブロックを入れ替える〟ということをしました。
この場合、私は⑦から語ったことになります。
実際に語った順に並べ替えると……
⑦→①→④→⑤→②→③→⑥
こんな感じです。
わかりやすくざっくりしていますが、正確にはもうちょっと細かくブロック分けしています。
でもだいたいこんな感じです。
巳之吉にあたる人物の物語の事後から語らせることで、効果的にスケアリーポイントを配置できたのではないかと思います。
物語の筋そのものに手はいれず、場面を入れ替えるということをまず最初に行ったわけです。

2.時代を現代に置き換えない

これはかなり重要に考えました。
〈時代を現代に置き換えない〉と一言で言っても、その意味はひとつではありません。
裏を返せば、〈原典の時代を伝えない〉ということでもあるからです。
現代怪談のように錯覚してもらう――この〝錯覚〟というのが大事なのですが、あくまで原典をアップデートするのではなく、〝ダウングレード〟することを心掛けました。
要するにディテールを下げることで描写を曖昧にし、いつの時代の話かを悟らせない。
だから時代を象徴するような言葉や物は使わない。
もちろん時代考証をちゃんとすれば、「この時代にそんな言葉はない」とか色々あるのでしょうが、そこは重要ではなく語りの最中にいかにバレないかが肝要だということです。
〈時代を現代に置き換えない〉とは、原典の時代はそのままなので、例えば山小屋を食堂とか、木こりという仕事を林業、村を市街にしない、そして登場人物の台詞に横文字を使わないなど、そういった事柄も指すということです。
……実は、実際の語りの場面で一か所、最東は失敗しています。巳之吉の回想の中で「ショック」という言葉を使ってしまいました。
言った直後に気づきましたが時すでに遅し。悔やまれるミスです。
それと『雪女』では、〝登場人物の名前を出さない〟という手法を使いました。
いくら時代を隠匿したとしても、登場人物が『巳之吉』『茂作』ではあまりにも現代の名前感覚からはかけ離れています。
なので、これは使わず。
この話を〝誰かが誰かから聞いた話〟と定義し直し、その〝誰か〟を自分自身にしない。そういうことを心掛けました。

3.自分の言葉で語る

最後の制約は〈自分の言葉で語る〉です。
そんなこと当たり前だと思うかもしれませんが、最東怪談の場合、もうちょっと突っ込んでいます。
というのも、ここには〝地の言葉を使う〟が含まれているからです。
この〝地の言葉〟とは、物語における地方の〝地の言葉〟ではなく、自分が普段使っている言葉を指します。
最東の場合だとずばり〝関西弁〟がそれにあたります。
つまり、どこが舞台で誰が喋ろうともすべて〈自分が普段使っている言葉で語る〉ということを徹底しました。
最東は怪談のだいご味は、「友達から聞いた話」だと思っているので、兼ねてから「怪談なんて立ち話の延長線上でいい(それが一番怖い)」と豪語しています。
なので格式ばった語りや、素人なのに無理して使い慣れない方言を駆使して演じたり、そういうのが恐がる上でノイズになるのではないかと考えました。
もちろん、そういう語りを否定するものではなく、あくまで最東怪談を語るうえでの考えです。
なにせ、古典怪談を古典怪談であるとバレないために色々と仕掛けをしている手前、語り口で違和感を与えたくないからです。
ちょっとした引っ掛かりから仕掛けがバレる……なんていうことは、本業の小説業でもいやというほどあることですし。
だから、東京は青梅が舞台の『雪女』も登場人物はゴリゴリの関西弁で語ります。
知っている人の「ん?」というひっかかりよりも、流暢さで説得力を持たせようという魂胆なのでした。

4.ささやかな要素をひとつだけ足す

挙げていない4つめの制約が突然、登場しましたがこれは本当にささやかなものです。
ある意味、ひとつめの〈物語を改変しない〉と矛盾しているようにも思えるのですが、改変ではなく原典では語られなかった解釈をひとつ足すということです。
『雪女』の場合、最後に巳之吉が結ぶ「これでもう一回会いに来てくれるかな」がそれにあたります。
実話怪談風を徹底するならば、曖昧な結末でもいいとは思いますが元がきれいにまとまった物語なので、やはりしっかりとオチは付けたいと考えました。
それで物語を締める、ささやかな要素をひとつだけ足すことにしたのです。
これでより現代怪談風な味付けができたのではないでしょうか。

基本は削ぐ作業

お分かりいただけたでしょうか。
以上の制約やら取り決めというか、まあ縛りをもって最東怪談は制作しました。
怪談トーナメントにおいて、〝話を作る〟という作業はまさに異質でしたが、そこは小説家という職業柄、自らの特性を活かせたと自負しています。
3つ(4つ)の制約をご紹介しましたが、総じて言えるのは基本的に最東怪談……古典怪談を現代風に再解釈するということは、〝削ぐ作業〟であるということ。
それを端的にダウングレードと喩えましたが、削ぐとは〝あえて語らない〟も含まれます。
『雪女』だと雪女の外見の描写は語りませんでした。
これは最東の中で〝美女〟という要素がスケアリーポイントの邪魔だと思ったからです。
ほかにも子供が10人いるということも語りませんでした。
結果、原典の物語に比べると平坦な語りになったかと思います。
ですが、余計なものを削ぎ落したことでよりこの物語が持つ恐怖の要素を剥き出しにできたのではないでしょうか。
怪談15日戦争で勝ち抜けられた、という事実がこれを証明していると信じています。

ちょっと『雪女』の解説だけでめちゃくちゃ長尺になってしまったので、ほかの2本については要望があれば検討します……ということで。笑

実話怪談ブームに風穴空けてやったぜ!!

審査員のほたみ姉さんからもろたカラフル芋虫

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