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公開日: : ショート連載

奇妙な噂を聞いた。

このところ、駅前のゲームセンターに私がいるというのだ。

 

職場の同僚からそれを聞き、「上司に知られる前にやめておけ」と謂れのないことに釘を刺された。

 

いい大人である私がいまさらゲームセンターに一人でいくことなどないだろう。

 

そう思い、同僚の話を耳を筒にして流していた。

 

「あ、そうそう! こないだゲームセンターにいましたよね」

 

別の場所で大学の後輩と飲んでいるとき、またもやゲームセンターで私を見たという。

 

実は、既にこれで4,5回目の目撃談だった。

 

――そんなに似ているのか。

 

好奇心もあり、私はそのゲームセンターに行ってみた。

 

最新のゲーム達に囲まれて、少々光酔いしそうになったが、ついに見つけた。

 

「ゲーム」というなんのひねりもないタイトルが書かれた台に座っている男。

 

なるほど、後ろ姿は確かに似ている。

 

しかし話しかけたところで、何を言っても言いがかりになってしまうので、

 

ただ後ろから覗き込んでみた。

 

(どんなゲームなのだろう)

 

そのゲーム画面には、ゲームをしている男の背後からゲーム画面を覗き込んでいる画像が映っていた。

 

「……え、なんだこれ」

 

思わず声が漏れる。

 

「あ~あ、見つかっちゃった。ゲームオーバーだね」

 

男は私に振り返り、残念そうに言った。

 

その男とは、……私だった。

 

 

『最近、あの人仕事全然来てないけど、ずっとあのゲームセンターにいるみたいだよ』

 

 

 

 

 



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