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【連載】めろん。74

公開日: : 最終更新日:2020/12/15 めろん。, ショート連載, 著作 , , ,






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・破天荒 32歳 フリーライター⑯




「ああ、それと」




 回転いすでこちらを向いた坂口が手をこまねく。




「なによ」




「これを見ろ」




 そういってパソコンの画面を指した。




「先に言っておくが」




「……?」




 坂口は口元に指を立てている。『これを見ても騒ぐな』ということらしい。




 無言でうなずくと画面を見た。




 坂口に注意されていたのを忘れて叫びそうになった。思わず声がでないよう口を押さえ、目を閉じて深呼吸をする。




「ふぅー……」




 気を落ちつけて改めて画面に表示されているソレを見る。




 ギロチンの映像だった。この施設に設置されている監視カメラの映像らしい。数人の男に囲まれ、連れていかれている。




「知り合いか」




 小声で坂口が訊ねた。目を見て、うなずく。




「そうか……」




 ひとことそう答えると目を伏せた。厭な予感がする。




「まさか」




「残念だよ」




 自ら口を塞ぎ、もう片方の手で強く胸を掴んだ。掴んだ拳に力をこめ、固く目をつむる。そうでもしてないと喚き散らしそうだった。今だって、わずかに気を緩めれば感情のまま叫びまくり、暴れ倒してしまいそうだ。




 ギロチンは死んだ。殺されたのだ。




「……先週の画像だ。招かざる客の行く末でもある」




 つまり、私たちも気を抜くとこうなるぞ、ということだ。わかっていても許せない。同時に巻き込んでしまった自分の責任にも圧し潰されそうにもなった。




「~~っ!」




 感情が収まらない。食いしばった歯は折れそうだ。固く閉じている瞼をこじ開け、涙がとめどなく溢れる。




 ギロチンはいいやつだった。将来は有望のライターで、彼の記事は好きを形にしているのが伝わってくるようでどれも面白かった。




 それを私が――……!




「蛙子ちゃん、大丈夫?」




 パチン、となにかが弾けるように消えた。




 檸檬の心配する声が私を自責の念から解放した。いや、仮初の解放には違いない。だがこんな姿ばかり見せてはいてはだめだ、という気持ちが瞬時にして視界をクリアにしたのは本当だった。




「大丈夫……大丈夫だよ。檸檬」




「次も見てくれ」




「鬼かあんた」




「俺が見てほしいのはむしろこっちだ」




 深呼吸をし、また取り乱しそうにならないよう檸檬を連れたまま再びパソコンを見た。




「……君の知り合いが持っていたメモの中身だ」




「ギロチンのメモ?」




 小声で会話をしながらさらに画面を凝視した。




「没収されてもう処分されたが、その前に数枚スマホで撮影した。すくないが、気になるようなものはあるか」




 坂口が言った通り、メモを撮影した画像はすくなかった。だが情報量は多い。




「……ごめん、ちょっとの間でいいから席かわってくれない」




「ふん、すこしだぞ」




 そう言って坂口は席を譲った。




 デスクにつき、マウスを操作して拡大する。エッジの効いた外見に似合わない、読みやすく整った字が躍っている。それも1ページあたりに大量に書き込まれていた。




 鬼子村について……〝めろんは本来、子供にしか発症しない病かもしれない〟というメモもある。




「子供……」




 檸檬と理沙。全体的に見て子供の発症者の比率はどんなものなのだろう。




 それにこの清掃夫の男……これは




「両間伸五郎」




「間違いないだろう」




 うしろから坂口が答えた。私が考えていたことがわかっていたようだ。




「めろん発症者の子供の率って」




「74%。概算だがね」




 ぞわりと背が粟立った。74%? 7割以上が子供?




「子供が発症し、のちに大人が感染するケースが多い。初期発症は圧倒的に子供からのケースが占めている」




「その結果はあんたは知っていたの」




「もちろんだ。鬼子村についても知っている」




「ギロチンは……そのことを知ったから、殺された……?」




 坂口が言っていたことを思い返す。




 この施設は誰でも入れるものではない。山を迷って辿り着いた末に入れることはまずない。私たちのように『内部の者から招かれた』りしないかぎり――




 ギロチンは、清掃夫……両間伸五郎に招かれた。




 坂口はこうも言っていた。




 奥にあるめろん村にはメロン発症者と発症可能性の高い近親者が連れてこられる。そのほぼすべてが『強制的に連行される』のだ。違う目的で自らやってくることは稀。




 なんらかの目的でやってきたとしても易々と中には入れない――。




 ギロチンは招き入れられた。鬼子村の真実に近づきすぎたから、殺された。




 つまり、ギロチンの件はやつらにとっても非常事態だったのではないだろうか。




「……でも、公安がひとを殺すなんてリスキーなことを」




 そこまで呟いてハッとした。




 死んだことが公表されなければただの失踪者だ。そしてここに住む住民たちは、外からだされることなくここで生涯を閉じる。めろん発症か、食われることで。




 そもそも大城を捜すという目的もあった広志だったが、対外的には大城は『失踪した』ことになっている。中で大城を発見したかどうかはわからないが、もしもいたとすれば――




「坂口さん、ギロチンがカギを握っているかもしれない」




「なんだと?」




「ギロチンが、〝どうして殺されなければならなかったのか〟を紐解けば、そこに真実か隠れているかも」







めろん。75へつづく

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