私のトラウマ映画2 / 食人族
■フェイクドキュメンタリーの先駆け
どうも最東です。
前回のトラウマ映画では『ネクロマンティック』をご紹介しました。
『ネクロマンティック』ではネクロフィリア……つまり死体愛好家が題材として描かれていましたが、食人族ではタイトルの通りずばり『食人が文化として存在する部族』がテーマになっています。
ネクロマンティックが死体損壊や屍姦がメインで描かれていたのに対し、こちらでは【生きたまま食べられる】という描写もあります。
そもそも【愛好家】である趣味で死体を愛するネクロフィリアと【食文化】である食人族を同列で比較するのには無理がありますよね。
ですが、二つとも【人を物として愛する】という点では共通しているのではないでしょうか。
■POV方式のパイオニア
先ほどの見出しと今回の見出しがほぼ被ってしまいましたが、この食人族は当時としては大変珍しい撮影手法で撮影されています。
POV方式と呼ばれる撮影手法をご存知でしょうか。
世の中には3文字のアルファベットで構成された略語が多く、分かり辛いと思いますが実はPOVというのは一つの撮影手法の事を差します。
まだまだ聞き馴染みの薄い言葉だと思いますが、このPOV方式でされたある映画がこの方式を一躍有名にしました。
それが「ブレアウィッチプロジェクト」です。
世代によってはピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、一大ムーブメントを起こした大ヒットホラー映画です。
現在でも大ヒットした低予算映画というのはたくさんありますが、その中でも凄まじい反響を産んだのはこのブレアウィッチプロジェクトではないでしょうか。
さて、そのPOV方式、どのような撮影手法かというと別の言葉では【フェイクドキュメンタリー】という言われ方もします。
要は一人が手持ちカメラを持ってあたかもリアルに現場にいるかのような臨場感を出すのに特化した手法ということです。
だから登場人物はカメラをカメラマンとして一人の登場人物とし、カメラ(マン)に向けて話しかけたりもし、あくまでカメラマンの持つカメラの映像ということなので、いなくなった人間などはどこでなにをしているかなど分かりません。
フェイクドキュメンタリーとも言われるだけあって、まるでドキュメンタリー番組を見ているようで、観ている者はまるで【映画の中の登場人物】になったような錯覚をも感じさせます。
映画というより映像記録という形を模しているので臨場感はあるものの、シナリオの面では奇抜なものはなく、明かされる秘密もほぼありません。
ですのでシンプルな題材が扱われることが多いですね。
近年話題になり有名になったPOV方式を取り入れた映画といえば『●REC』、そしてジョージ・A・ロメロ御大の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』、そして『パラノーマル・アクティビティ』などがそうです。
あたかもそこにいるような感覚は現在、色々な映画にしようされています。
さて、ではこのPOV方式の走りとはなんの映画なのか?
これが実は食人族なのです。
もしかすると食人族以前にもPOVに似た方式で創られた映画があるかもしれせんが、タイトルの著名度と合わせればこの方式が世に出たきっかけとなった作品は間違いなく食人族です。
■POV方式がもたらした恐怖
POV方式を効果的に扱い、観ている者の恐怖を煽る演出に特化し人気を博したのが『ブレアウィッチ・プロジェクト』とするならば、観ている者の気味の悪さを煽っているのが『食人族』ではないでしょうか。
簡単に食人族のあらすじ紹介しますと、こうです。
ある撮影チームがアフリカの原住民を取材ロケに行ったまま帰ってこなくなり、調べにでたクルーたちはその原住民たちと接触します。
そして彼らは消えたクルーたちが残したフィルムを入手することに成功し、その中身を見ると原住民たちを弄び、好き勝手する彼らが映し出され、それにより原住民の怒りを買った彼らが原住民たちに生きたまま喰われる信じがたいほど凄惨な映像だった……。
というものです。
ドキュメンタリー風に撮っているため、原住民たちに喰われるクルーたちをカメラが無情に、淡々と記録している様になんとも言い難い恐ろしさを感じます。
■これこそトラウマ
しつこいようですが映画としての手法ではないので、象徴的なシーンでBGMが流れたり、効果的な構図であったりとそういったものが皆無です。
だからこそこの作品を観た観客は当時ほとんどの人が「本物の映像だ」と誤解し、事実問題になったこともあります。
ですが出ている俳優はみな食人族上映後も他作にも出演していますので、本物ではなくフェイクだと立証されました。
私はこの作品を観たのが実は小学生の頃でして、これが自信のオカルト魂に火を点けるきっかけになったと言っても過言ではありません。
この世の中には人を人が喰う人種がいると信じ、それが自分の中で最も恐ろしいことであると植えつけられたのです。
なので今だに私は『食人族』で描かれた『食人描写』がなにより恐ろしいものだとして記憶しており、それは現在の私の作風にも色濃く表れていると言っていいでしょう。
原住民たちがとにかく野蛮で、食人シーンは目を覆いたくなるような凄惨さです。
ですが、原住民よりも好き勝手暴れまくる食べられた取材クルー達のほうがよっぽど野蛮で愚かであると気付かされるのが、妙に奥深い作品です。
食物連鎖のバランスが壊れるというのは恐ろしいことです。
万物のバランスがおかしくなる要因というのは常に人間が原因です。
同性愛という生物の生態を犯した罪はエイズ、牛に牛を食わせるという凶行で生まれた狂牛病。
人が人を食すようになったとき、一体今度はなにが壊れるのでしょうか……。
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