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【連載】めろん。41

公開日: : 最終更新日:2020/02/03 めろん。, ショート連載, 著作 , , ,






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・ギロチン 29歳 フリーライター①




 行動力には自信があるし、定評もある。というよりも気になったらじっとしているなんてできない性分だ。




 子供のころから周りから浮いていた。没頭しすぎるから周りとのペースを測れず、よく母親が呼びだされた。母親は昔からよく言えば放任主義、悪く言えば育児放棄気味の女で、何度呼びだされても学校にきたことはない。




 それが親たちの間で余計に悪評となって広まり、大人たちからも子供たちからも浮いた。だが俺にはそれが心地よかった。




 誰も邪魔しなくなってからは気兼ねなく好きなことに没頭することができた。




 学校七不思議やら都市伝説に始まり猟奇殺人鬼、未解決事件、果てはUFOにも興味を広げた。休みともなれば近所の図書館に入り浸ったし、行ける範囲でならどこにでも行った。




 焼け焦げた廃墟にも行ったし、怪物がでると噂の湖にも行った。もちろん全部ひとりでだ。




 高校を卒業してからはさらに好きなことへの執着は加速した。リスペクトしている映画や小説家、ミュージシャンなどの名前やイラストを体中にタトゥーを彫った。




 肉体改造にもハマった。肉体改造といっても筋トレやダイエットじゃない。ピアスや皮膚の下にシリコンやゴムを埋め込んだりするほうだ。




 この辺はカウンターカルチャーとして世界的に受けいられつつあるが、日本ではまだまだ理解が追いついていない。




 いくら顔の見えない仕事をしているからと言っても、あまり派手にしすぎると仕事に支障をきたすので泣く泣く控えているが次に彫りたいタトゥーは決めているし、行きたい場所だって決まっている。




 特に行きたいところのひとつは今夜叶いそうだ。




 胡散臭いメロンの案件だが、胡散臭さこそ俺の真骨頂。調査の結果、なにもなかったとしてもそれはそれでいいネタになるし、俺自身が満足する。




 事実がくっついてきたならさらに興奮だ。勃起が止まらない。




 ウェンディゴの悪魔憑き。メキシコの土着信仰がどのようにして広島の片田舎に伝わったのか。気になるところだがそこは今回の取材の本懐じゃない。




 あれこれと気になることはあるが、俺の最興味の中心は『行ってみること』だ。




 破天荒と話してから居ても立っても居られなくなった俺は彼女と別れてからすぐ新幹線に飛び乗った。




 今からだとメロン村に到着するのは深夜になるな……。




 車を用意しなければならないことを考えると行くのは明日の方がよさそうだ。




「そのまえにとりあえず……」




 広島の面白い店を探してから、ホテルは適当に。




 スマホをいじりながらも、夜の新幹線は広島へ向かう。




 翌朝、カプセルホテルをでてファストフードでチリたっぷりのホットドッグにかぶりつく。まずレンタカーを借りて、情報集めからだな。




 昨夜飲んだBARで客や店員に訊いたところ、やはりメロン村なる胡散臭いものは誰も知らなかった。




 俺のようなパンク系のやつが集いそうなBARは残念ながらなかったせいで、適当なBARに入ったのがいけなかったのかもしれない。




 もう少し入る店を精査すればもう少し有益な情報が入手できたかも。




 そもそも突貫的にノリでやってきたのだから、その辺のリサーチがぬるくなるのは仕方ないか、とチリが付いた指を舐めながら笑った。




 一応、ネットではメロン村にある建物がなんなのかを調べてはみたが要領を得るような情報はなかった。というより情報そのものが極端に少ない。




 一体いつできたものなのかも定かでない上、衛星写真でもその存在自体は確認できるがストリートビューではそばまではいけない。




 結局行くしかないのだ。




「でもこの【最恐スポットナビ】の写真には写ってるんだよなあ」




 これの刊行はもう四年以上前だ。少なくとも四年以上はここに存在していることになる。




 さらに言えばなぜこの本の中でこの建物については一切触れていないのだろうか。




 まるで口裏を合わせて隠し通そうとしているようにしか思えない。




 ここの編集たちはなにかを知ったとか? もしくはなんらかの圧力があったとか?




 まあいいそんなことは。とにかく現場に行くことがすべてだ。




 ファストフード店をでて、地理の再確認する。昼間なので二時間以上かかるかもな、などと考えつつ安いレンタカーを検索した。




 車でメロン村がある山に行く途中、いくつかの店で情報を収集した。




 村の出自を考えると年寄りを中心に聞いた方がいいと思い聞いたが見事に当ては外れた。




 ここまでなにもヒットしないと俺としても不安になる。




 いくらなんでもこんなにも徹底的に誰も知らないのか。すぐそこの山なのに?




 このまま行ってもいいが、ひとつくらいはなにか欲しいところ。




「あれ、もしかして『メロン村』っていう名前がだめなんじゃないのか」




 ふとそんな考えが降ってきた。そうだ、メロン村という名前は勝手に誰かがつけただけで、地元の住民はそう呼んでいたとは限らない。




 正式なちゃんとした村名があったと考えるのが自然だ。




「あ~! なにやってんだ俺は」




 ノリと勢いだけで行動するとこういうこともままある。そのたび、こうやって地団太を踏んでは後悔するのだ。




 我ながら学ばないな、と思いつつ今から村の本当の名前を調べるのは不可能だ。




 正確に言えばメロン村に行くのは明日でもいいが俺が待ちきれない。




「だったら……」




 そうだ、メロン村の出自を説明すればいい。そうすれば知っている住民から村の名前も聞けて一石二鳥だ。




 そうと決まったらもうちょっとだけ収集してみよう。




 俺はコーラの空き缶をゴミ箱に投げ入れると車を発車させた。










めろん。42へつづく

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