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住めば都 / ホラー小説

公開日: : ショート連載, ホラーについて

住めば都

 

 

 

■事故物件住みます

 

 

 

2LDKで駅から徒歩7分。バス・トイレ別。これが俺んち。

 

 

物件情報ではこう書いてあるけど、歩いて駅までいったら絶対に15分はかかる。

 

 

よくこういうのって、直線距離と信号や障害物を度外視して算出した時間だっていうけれど、まぁ詳しいことはよくわからない。

 

 

駅から15分っつってもさ、そりゃ歩けばそのくらいかかるわけで、自転車で行けば7分で間に合っちゃうわけ。

 

 

あ、そういうことでいうなら『徒歩=自転車』っていう暗黙の了解みたいなのを作っちゃえばいいんじゃね?

 

 

うは、俺マジでニッチな穴に刺しちゃう感じじゃん。

 

 

ここんとこ外に出てないから、道路工事とかしてたらそうじゃないかもしんないけど、そこは別にいいっしょ。

 

 

ところでさ、最近の俺の悩みを聞いてほしいんだ。

 

 

前にも言ったと思うんだけどさ、俺の部屋っていわゆるその『事故物件』ってやつでさ。

 

 

知ってて借りたんだ。

 

 

だって俺はそういう曰くつきみたいなのって気にしないし、ここで誰かが死んだからって別に気味悪くもなんない。

 

 

確かに、死体が放置されてたり、シミがついてたり、匂いが残ってたりしてたら嫌だよ?

 

 

けどきれいにクリーニングされてたからそんなこともないしさ、住んでみると快適だ。

 

 

それが隣の部屋やほかの部屋と比べて家賃が3分の1だっていうんだから儲けもんっしょ。

 

 

あ、もしかして今『幽霊がらみの悩み?』とか思った?

 

 

ざ~んね~ん。

 

 

そんなぬるいことじゃないんだよね。

 

 

ま、確かにオバケさんの仕業? みたいなことはたくさんあったよ。

 

 

うちの冷蔵庫ってさ、開けっ放し防止でしばらく扉を開けておくとピーピーってアラームが鳴るんだけどさ、夜中寝てるときに鳴るんだよ。

 

 

見たらちょっと開いてたり。

 

 

あとはシャワーの音がしてバスルームを見てもなんもなかったり……。

 

 

あ、そうそう。インターホン鳴らされたこともあるな。

 

 

でもね、こんなのも別に慣れてしまえば楽なもんだよ。

 

 

 

■悩み

 

 

 

でさ、俺の悩みってやつなんだけど。

 

 

ここんとこ俺の部屋に誰か知らないやつが入ってくるんだよ。

 

 

幽霊じゃないぜ。オバケでもない。

 

 

だって幽霊やオバケはもう友達みたいなもんじゃん?

 

 

一緒に住んでるんだから。

 

 

そういうことじゃなくって、普通の人間だよ。

 

 

突然、部屋に入ってきたかと思うとずっと居座ってさ。

 

 

俺も怖いから様子を見てたらそのまま居着いちゃって。

 

 

でも決まって2週間くらいでいなくなるんだよな。

 

 

あ、決まってってのは……1人や2人じゃないんだよ。

 

 

定期的になんか、知らない……男ばっかりだな。そういや。

 

 

たまには女が来てもいいのに。

 

 

ともあれ、いなくなってはまた違うやつがやってきて居座る。

 

 

そしたら2週間くらいでまたいなくなるんだ。

 

 

迷惑な話だろ?

 

 

俺の部屋なんだぜ。

 

 

 

■前の住人

 

 

 

けれどこんなことが続くもんだからさ、自分の住んでる部屋にどんな事故があったのかってさすがに気になったわけ。

 

 

で聞いてみたら自殺だってさ。

 

 

ほら、そこのフックあるだろ? そこにビニール紐で首吊ったんだと。

 

 

あとで聞いたらさ、ここで自殺したのって一人じゃないらしい。

 

 

4人、4人だってさ。

 

 

しかもみんな首吊りだって。

 

 

そりゃ家賃も下がりに下がるよな。

 

 

ここしばらくは知らないやつがやってくることはないからひとまず安心はしてるんだけど、次いつまた来るかもしんないからヒヤヒヤしてるんだ。

 

 

プライベートな空間っていうか、やっぱりそういう場所に他人がズケズケ入ってくるのって嫌じゃんか。

 

 

ま、かくいう俺もね。最初は信じてなかったさ。

 

 

ここの部屋のジンクスってのも。

 

 

不動産屋のお兄さんにもそういって笑ってやると安心したような顔してたっけな。

 

 

けど次にお兄さんに会ったときはヒドイ顔してたよ。

 

 

真っ青になってワナワナしてんの。

 

 

なんだかその顔がおかしくってさー。

 

 

その時からなんだけどね、知らないやつがやってくるようになったのは。

 

 

 

■同居

 

 

 

考えてもみてほしいんだけどさ、この部屋に男5人は狭いんだよね。

 

 

やっぱり今の4人で住むのがちょうどいい。

 

 

狭いといえば狭いけど、俺らは別に寝なくて大丈夫だし。

 

 

だから急にやってくる見知らぬ5人目の男が邪魔なんだ。

 

 

俺は冷蔵庫開ける係だからまだ楽だけど、インターホンやシャワー係は面倒だろうな。

 

 

ところでさ、俺のことをずっと見てるあんたは一体誰?

 

 

これまでのやつみたくこの部屋に居着くために来たんじゃなさそうだけど。

 

 

あんたが来て部屋の中にお香や札を貼ってからやけに体が重いんだよね。

 

 

悪いけどフィーリングがよくないみたいだからさ、帰ってくんない。

 

 

その歌もめちゃくちゃ耳障りだし、鈴も嫌だ。

 

 

……あれ、そういえばほかの3人がいないなぁ。

 

 

どこにいったんだ? さっきまでいたのに。

 

 

ふと目線を奥にやると不動産屋のお兄さんが震えながら心配そうにこっちを見ている。

 

 

あ、お兄さん久しぶり。でもまたそんな顔してるんだ。

 

 

「いいですね。祓いますよ」

 

 

「よ……よろしくお願いします」

 

 

払う? なにを?

 

 

あ、もしかして家賃かな。最後に払ったのいつだったっけ。

 

 

パァン

 

 

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