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怪紀行青森・我が子の幸せ願う 人形婚 川倉賽の河原地蔵尊

■憧れの場所・AOMORI

どうも最東です。

もう長いことスーツを新調していません。今のところ多くない冠婚葬祭のシーンでも、とくに困っているということもありませんが、さすがに最東も40ちゃいを越えたおじ。(ところで最近の〝おじ〟って略語はなんだ! おじさんから〝さん〟をとっておじということだと思うが、敬称をとったらみすぼらしさしか残らないじゃないか!おじってなんだ、おじって!くっそう、……まあ、でも池田イライザにおじって呼ばれるのはやぶさかではない、というか呼んでほしい。耳の穴に鉛筆突き刺してほしい)

結婚もお葬式もパーティーの場も、どれも同じスーツを着まわすのはしのびない……、ということで最東はやってきました青森――

WAO!

それ青森ちゃいまんがな!青山ですやんか!!

と、いうわけで長年憧れていた青森へとやってきました。

ついに怪紀行、東北デビュー!しかもいきなり本州最北から攻めちゃったよ!(だからといって青森から順々に南下するわけじゃないよ!)

しかも、今回、撮れ高エグマウンテンなので、この記事からしばらくは青森篇が続きます。

りんご!ほたて!ねぶた!

り・ほ・ね、りほね、り・ほ・ね!

■青森は最高の旅先

怪紀行をはじめたきっかけのひとつに、一冊の本があります。

吉田悠軌さんの『ホラースポット探訪ナビ』です。全国のホラーなスポットをナビしてくれている、タイトルそのまんまの実用書。(最東にとっては実用書)

そこに青森の川倉賽の河原地蔵尊が記載されていて、それを読んだ最東は衝撃を受けました。

こののちに、TBS『クレイジージャーニー』に吉田さんが出演された際にも紹介されていますが、ここには大小あわせて約2000体のお地蔵様と人形婚のお堂があります。

正式には水子地蔵堂といいますが、ここで人形婚の人形たちが見られます。

人形婚とは、「冥婚」という東北に見られる風習のひとつで、未婚で亡くなった家族を死後に結婚させてあげる、というものです。

有名なものでは山形の「ムサカリ絵馬」という、絵馬に死者と架空の異性を描き婚姻させる風習がありますが、川倉賽の河原地蔵尊では人形がそれにあたります。

これを知った時から、最東の「いつか行ってみたいところランキング」のトップに君臨していました。

そこで今回、満を持してついに青森に上陸を果たしたのです。

しかしまあ、大阪から青森……飛行機で1時間半は速いッッ……!!大阪―東京が新幹線で2時間半なのに、端っこまでいって一時間早いのは、いくら飛行機だからといってなんらかのバグとしか思えない。

最東は久しぶりに飛行機に乗りました(13年ぶり)が、昔はとても怖かったのが、今回はやっぱり怖かったです。(チキン)

それはさておき、青森には友人のMOCCHAN(もっちゃん)が同行しました。

怪紀行童貞といっても過言ではないMOCCHANですが、恐山に行きたいという共通概念でこの度一緒にめぐることとなりました。

幸いなことに、当日はピーカンの快晴。青空と緑に囲まれた景色に、青森とはよく言ったもんだ、と青森の名づけ親(?)に感心しました。

■人形婚

川倉賽の河原地蔵尊にやってきた我々は、まず境内や周辺を散策しました。

本殿ではお経を唱えていたので、とりあえずあとにしつつ、あちこちにいらっしゃるお地蔵さんたちに手を合わせたり、写真を撮ったりしました。

裏手は緩やかな下り坂になっていて、下りたところには広い池があり、その奥に霊園が見えてきます。

MOCCHAN曰く、その昔津軽では幾度となく凶作や飢饉に見舞われた歴史があります。

この飢饉によって、亡くなった人々を無縁仏としてこの地で弔ったそうです。(案内板に書いてあった)

歳場のいかない子供たちもこの飢饉でたくさん命を落としたこともお地蔵様の数に由来しています。幼子の死に際し、墓地や村境に地蔵を立てる地蔵信仰の風習です。

死した子供や未婚の死者たちの要望を聞き遂げるためにクチヨセが盛んだったことから、津軽のイタコが口づてに有名になり、恐山と双璧をなすようになったという時代がありました。

ご存じの通り、現在ではイタコの人口は減少の一途をたどり、現役でやっておられる方はごく少数とのこと。メディアで取り上げられ、有名になりすぎたという理由も確かにあるとは思いますが、現地に足を運んで肌で感じたのは「それだけ子供が死ななくなった」という側面もあるのではないかということです。

平和、というのがどのような定義によって語られるかは人や思想の数だけ違うと思いますが、少なくとも戦争や飢饉とは無縁の現代の日本においては、昔ほど子供があっけなく死んでしまう事例は減ったのではないでしょうか。

そうしてついに、水子地蔵堂へと足を踏み入れます。

本で読んだ、テレビで観た、思い焦がれた光景です。

堂内はひんやりとしていて、しん、と静まり返っていました。

左右の棚にはずらりと上から下まで、奥の突き当りに向かってガラスケースが並んでいます。

そのひとつひとつに、人形が二体。時には子をもうけ、三体以上のものもありました。

人形の傍らには、古びた写真が遺影のように飾られており、それが故人のものだとわかります。

男性の写真なら、人形の新郎は彼です。

女性の写真なら、人形の新婦は彼女です。

ガラスケースには、故人のお名前と配偶者の名が記されていました。

故人のお名前には『寂』とあり、没や逝去、享年など死を連想させる字の代わりとして使われています。

MOCCHANがそれが記された札をひとつひとつ観察しながら、「精霊って書いてある。ひとつの宗派ってわけじゃなく、この土地独自の宗教観がるっぽいな」と言っていました。

最東は宗教や仏教には明るくないのでよくわかりませんでしたが、MOCCHANは興味深げでした。

静まり返った堂内に溢れかえる人形たち。

しかし、不思議と寂しいとか怖いとか、そういった感情はありませんでした。

そこにあるのは、子の幸せを、家族の幸せを思う、人の悲しさと温もりです。

よく、『死者は年を取らない。死んだ時からずっとそのまま』などと言われますが、ここではしっかりと時間が存在しています。

それは家族が、遺族たちが死者の時間をすこしずつ進めているからです。

確かに、死者の時間は止まっているかもしれない。ですが、死者の時計は手動で動かすことはできるのです。

生きている者たちの中で、死んだ者の時間を進める。そうすれば、結婚だってできるし、死後の幸福だってありうる。

それは、死者のためでもあり、残された者たちのためでもある。

一見、異様のように思える人形婚という信仰ですが、そこにはなんの変哲もない、普通で、それでいて普遍の愛がありました。

そして――

「アッ! 本殿見てない!」

最東たちは、川倉賽の河原地蔵尊に訪れた際、お経を唱えていたのでその時入るのを遠慮した本殿の存在をすっかり失念していて、次のスポットでそれに気づいたのでした。

ずらりと並んだ圧巻の地蔵群があったはずなのに!

なにやってんだ俺!俺のバカ!

でもおおむね満足して帰りました。

生と死に静かに向き合える場所なので、青森に来られる際はぜひお立ち寄りください。

合掌

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