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怪紀行番外編 国内唯一!思い出の味、バーガーシティ豊岡サンロード店 1

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■ドライブは事件の香り

前回の記事で紹介した長楽寺・但馬大仏を後にし、車に乗り込むと同行したイマムにこう尋ねました。

「君は『ハンバーガーチェーン』といえば、どこを思い浮かべるかね」

「ハンバーガーチェーンですか? そうですね、マクドナルドとかモスバーガー?」

イマムは続けて「モスは近くになくて全然食べてないんですけどね」と射貫くような瞳で私を挑発しました。

しかし、術中にはまったのは彼のほうです。売れっ子だからって油断したのです。

「ふむぅ、ほかにもあるねぇ……たとえばフレッシュネスバーガー、ウェンディーズ……」

「あっ!ドムドムもあるたい!

興奮して方言がでてしまったイマムですが、まるっきり違います。そんなメジャーなハンバーガーチェーンを口にするなんて、よほど焦っているようですね。

あまり虐めるのも悪いのでそろそろ正解を教えてあげることにしました。

「ハンバーガーチェーンといえば、『バーガーシティ』じゃろがい!」

「そんな街知りません」

そんなわけで私たちは日本に現存する唯一のハンバーガーチェーン『バーガーシティ』に行くことにしました。

その前にみなさんはバーガーシティを知っていますか?

イマムと同じように「そんな街知らない」なんて言いませんよね?

しかしまあ、今は令和の時代です。もしかしたら知らないというキッズもいるかと思いますので、渋々説明しますね。

■百円満点

『いいことあるぞ、ミスタードーナツ』

『I’m lovin’ it.マクドナルド』

『お、値段以上ニトリ』

と同じくらいかそれ以上の知名度を誇る『百円満点!』というキャッチフレーズでお馴染みのバーガーシティ。

小さなスペースでも開業できるとあって、1980年前半から後半にかけて精力的に店舗数を増やしたハンバーガーチェーンです。

最盛期は全国400店近くにも膨れ上がり、もはやハンバーガーチェーン戦国時代はバーガーシティの独り勝ちになるかと思われました。(諸説あり)

ですが、マクドナルド、モスバーガー、ドムドムバーガーなど大手チェーンの台頭、コンビニの需要拡大で徐々に勢力を縮小せざるを得なくなり、1998年にバーガーシティ本部が倒産。その後、個人経営の形式をとり看板を下げずに経営を継続した店舗が二店。

大阪府堺市白鷺駅前店と兵庫県豊岡市江原駅前サンロード店のみとなりました。そして、2018年に店主の高齢化と後継者不在で惜しまれながら白鷺店が閉店、ついに現存するバーガーシティは豊岡サンロード店のみとなりました。寂しいですね……ほろり

おっと、倒産したとはいえバーガーシティがなぜ最盛期に400店近くも店舗を持つほど消費者に支持されたかについてお話せねばなりませんね!

ずばりバーガーシティのウリは『100円バーガー』。ここで前出の『百円満点』というキャッチコピーとつながるわけです。(芸術的な伏線回収)

これを打ち出した当時、今ほど勢力を拡大していなかった他のハンバーガーチェーンと比べても破格の安さでした。なにしろ小学生のお小遣いでハンバーガー食べれちゃう。

2002年にマクドナルドが戦略的に成功した59円バーガーが記憶に新しいですが、バーガーシティが長くハンバーガーチェーンとしては最安だったのは言うまでもありません。

さすがに59円バーガーはやりすぎでしたね。当時の私としてもそう思っていました。

しかし、このころ大手チェーンでやたらと値下げ競争が過熱していた記憶があります。2001年、吉野家が牛丼並盛を280円まで値下げしたのにはギョッとしました。

しかし、その後はご存じの通り。

BSE問題で苦境に立たされ、輸入肉を販売できない時期が訪れると値下げ競争に終焉が訪れます。これまでが嘘のように価格高騰し、牛肉の代わりに豚肉・鶏肉が重宝されました。

今の世代の中には知らない人もいるかと思いますが、吉野家はこの事件があるまでずっとメニューは『牛丼』しかなかったんですよね。硬派なチェーン店だったんです。

正しくは『牛丼とその他サイドメニューのみ』ですが。(カウンターのショーケース懐かしい……)

今では牛丼以外にも豚丼やカレーもありますが、あの頃は考えられませんでした。

■少年時代の思い出の味

おっと、話が大きく逸れてしまいました。

とにかくバーガーシティは安くてうまい!がウリだったわけです。味付けもケチャップのみ、ピクルスも入っていません。

今となればピクルスのないハンバーガーは寂しいものですが、子供の頃はむしろピクルスは不要。シンプルなほど繰り返し食べたい味でした。

「最東さんはどうしてその街(バーガーシティ)のことを知ってるんですか?」

とイマムに訊ねられ、最東はそれを『どうしてそこまでバーガーシティに執着するのか』と意訳しました。

「話せばなるまいな……」

ちなみに今さらですが、どうしてバーガーシティの話をこんな分量書いているのかハッとなりました。もはや後戻りはできないので最後まで書きますね。

ふぁんふぁんふぁんふぁん……(回想に入る音)

あれは最東が小学一年生のころでした。家から走って数分のところにある駅前の一画(小学生は基本移動が走ることなので)、そこにバーガーシティがありました。

ただ、それだけならば別に思い出に残るほどのことではないと思います。ですが、そのバーガーシティの店先には10台ほどのゲーム筐体があったのです。

30年前ではこういう光景はいたるところにありました。駄菓子屋や床屋、店の業態を選ばずさまざまな場所でゲーム筐体が置かれていたものです。

バーガーシティは最東にとって、今の言葉でいうところの〈ホーム〉でした。とにかくしょっちゅう入り浸っていました。

知る人ぞ知る情報として、最東は格闘ゲームマニアです。(プレイヤーとしては並)

その礎はまさにこの時代、スト2(ストリートファイター2)、餓狼SP(餓狼伝説スペシャル)などにどっぷり浸かった経験からでした。

当時、そこに集まるのはほぼほぼ自分たちより年上のお兄ちゃんばかり。覚えたてのガキンチョにもムキになったりせず、大らかに遊んでくれました。画面端に山積みになった五十円玉が懐かしい……。

毎度、百円玉を握りしめて通っているわけですが、たまに手持ちに余裕がある時はバーガーシティの100円バーガーか二軒隣の100円たこ焼きを食べるのが最高にリッチでした。

そのバーガーシティのおっちゃんが人当たりのいい人で、みんなのお父さんみたいな存在だったことを覚えています。私もそのころおっちゃんに「対地」と下の名前で呼ばれていました。たまにハンバーガーを買う時なんかは「今日はリッチだなぁ」なんて言って笑ってくれたものです。おっちゃん、俺、なんか知らないけどホラー小説家になったよ。

そうして時は経ち、中学生になるころにはすっかり足は遠のきハンバーガーは後年、近所に出来たマクドナルドでばかり食べるようになりました。

悲しいかな、マクドナルドがどこにでもあるようになったのは90年半ばくらいからだと記憶しています。それまではマクドナルドは決してありふれたものではなく、子供の私としてはありふれたハンバーガーこそバーガーシティの100円バーガーだったのです。

だからマクドナルドが徒歩圏内に出来てからはもっぱらそこばかりに行きました。もはやバーガーシティは過去のものとしてしまったのです。

そうしていつのまにか、バーガーシティはどんどん閉店していきついに最東のホームだったあの店もなくなってしまいます。

あんなにありふれていたハンバーガーだったはずの100円バーガーはもう、食べたくても食べられない代物になってしまったのでした……ほろり。

「……ということがあったのだよ。イマムよ」

イマムはお茶飲んでました。

「ともかく、そういうわけで日本で唯一存在するバーガーシティに行きたかったのだ。これまでは遠いのでそれのためだけに行くのはなぁ、と思って腰が重かったけれども但馬大仏からそれほど離れてないのでチャンスだと思ってね(ニヒルな笑み)

イマムはお茶飲んでました。

怪紀行番外編 国内唯一!思い出の味、バーガーシティ豊岡サンロード店 2へつづく

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