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彼はなぜ死んだか / プチエンジェル事件が孕む闇

公開日: : おもうこと, ホラーについて

 

プチエンジェル

 

 

■マンションの一室で発見された男の死体

 

 

 

――警察が踏み込んだとき、大きなビニールシートの中で吉里弘太郎は息絶えていた。

 

 

吉里が死んでいたマンションの一室のほかの部屋には2つあるリビングにひとりずつ、そして脱衣所にふたり。

 

 

計4人の少女が監禁されており、そのうちのひとりの少女が決死の覚悟で脱出し近隣の花屋に助けを求めたことで事件は発覚したのだった。

 

 

「友達がまだ残っているから助けて!」

 

 

そう助けを求めて必死に懇願する少女は靴も、靴下も履かず白昼の住宅街に響き渡るような声を上げたという。

 

 

110番通報され、誘拐拉致監禁事件の疑いがあると押し入った警察はマンションの中にいるであろう吉里弘太郎(当時29歳)を容疑者として確信していた。

 

 

だが、彼は死んでいたのである。

 

 

 

■死因

 

 

 

大きなビニールシート、傍らに練炭が焚いてあった。

 

 

練炭自殺である。

 

 

少女がひとり脱出したのを知って、警察が来ることを見越し絶望のまま自殺したのだろうか。

 

 

他の部屋に監禁されていた3人の少女は無事に保護されていたが、逃げた少女も含め彼女たちはこのマンションの一室でなにがあったのかは決して話そうとしなかった。

 

 

いや、話すのは話したがそれは明らかに矛盾した内容だったという。

 

 

「なにも聞いていないし、なにもなかった。警察が来るまで彼が自殺していることなんてしらなかった」

 

 

というのだ。

 

 

凡そ信じられないような話だが、さらにあり得ないことが発覚する。

 

 

吉里は発見時、死後十数時間が経過していたというのだ。

 

 

少女たちの話によると、マンションは壁が薄く自分たちの物音で吉里は行動を把握し、そのため身動きが取れなかったのだという。

 

 

それはつまり彼女たちも吉里の物音には敏感に反応していたということだ。

 

 

だが彼が練炭自殺に及んだことは気付かなかったと話す……。

 

 

間違いなく誰かがなにかの嘘を言っていることにほかならなかった。

 

 

■35億円

 

 

 

事件発覚と吉里の自殺。

 

 

本来ならばここから調査が入るはずだった。

 

 

だが警察は吉里を【単独自殺】とみなし、事件性はないとして司法解剖もせずに断定した。

 

 

少女の監禁と不自然な練炭自殺。このふたつがあって【事件性がない】とは断定できるはずはない。

 

 

にも拘わらず警察は以降の捜査から一切手を引いたのだ。

 

 

死んだ吉里の家系は奇妙な家系だった。

 

 

彼の父親は新聞記者だったが事件の数年前に自殺している。

 

 

そして吉里の兄もその後を追うようにして自殺しており、親子・兄弟が連鎖的に自殺しているのだ。

 

 

奇妙なことといえばそれだけではない。

 

 

吉里の銀行口座には【35億円】という巨額の金があったのだ。

 

 

彼を知る人間に聞くところによると確かに吉里はフェラーリを乗り回したり高級ホテルで泊まったりと、派手な生活が目立っていたらしい。

 

 

だが一方で自宅のアパートやそれまで乗っていた軽自動車なども解約せずにそのまま残してある。

 

 

所謂『二重生活』を送っていた可能性があった。

 

 

この金の出どころも、警察は一切調べることはしなかったという。

 

 

 

■プチエンジェルという闇風俗

 

 

 

警察が手を引いた事件だが、報道機関は一定の追跡と調査を行いそのおかげでこの事件の輪郭がうっすらと見え始めてきた。

 

 

吉里は大学卒業後、裏ビデオの販売などをしていて数年前から『プチエンジェル』という未成年の少女を扱った性風俗サービスをしていたらしい。

 

 

当然違法である。

 

 

監禁されていた少女たちというのはどうやら『プチエンジェル』でサービスを行うコンパニオン……ということだったらしい。

 

 

彼女らからひとりが脱走したのを見ると、少女たちはなんらかの方法で連れてこられ無理矢理監禁されたのちに命令されていたとみられる。

 

 

一部報道で、この時に『プチエンジェル』の【顧客名簿】が警察に押収されたというのだ。

 

 

そしてその名簿の名前には、とんでもない名前がずらりと並んでいた。

 

 

■すべてはシナリオ通り……なのか

 

 

大物政治家や著名人などの名前が並び、その名前がもしも事件の関係者として(つまりプチエンジェルの客として)報道に乗った場合、社会的に取り返しのつかないことになる。

 

 

それをもみ消す……いや、『なかったこと』にしてしまったのだ。

 

 

警察がそのように働くということは、国家を動かす大きな力が動いていたのだと想像に難しくない。

 

 

では、誰が吉里を殺したのだろうか。そしてなぜ吉里は殺されなければならなかったのか。

 

 

監禁されていた少女たちは一体何を『見てしまった』のだろうか――。

 

 

死後十数時間経った死体。ひとりだけなぜか脱出できた少女。自殺家系。通帳に残った35億円。そして無理矢理自殺扱いにされた事件そのもの。

 

 

事実は小説よりも奇なりとはいうが、この事件の裏にある闇は深く暗い。

 

 

この事実を知ってしまうことでもしかすると私たちの価値観や常識そのものが揺らぐかもしれない。

 

 

とある情報提供者この事件についてこう語ったという。

 

 

「この事件の背後には裏社会や闇社会が関わっている。この事件が起こったころに起こったそっち系の事件を調べればきっと出てくるはずだ。東の勢力と西の勢力が抗争していたって……ね」

 

 

昨今、芸能界や各業界と反社会勢力との関係に注目が集まっているが、もしかすると国家の核とそういった闇社会は根本で繋がっているのかもしれない……というのは考え過ぎだろうか。

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