ホラー映画 / 死霊のはらわた(原作・
■ホラー映画評論
どうも最東です。
このところめっきり暑くなってきましたね。
この暑い夜長にわざわざこんなところに足を踏み入れる貴方が求めているのは、ヒヤリとした恐怖でしょうか。
そんなヒヤリとしたい夜にお薦めなこんな映画は如何でしょう。
■死霊のはらわた
映画ファンならばなにもホラー好きじゃなくても知っているこの醜悪なワンシーン。
サム・ライミが監督を務めたゴアホラーの金字塔。
同時にホラーとコメディを表裏一体にした記念作とも言えます。
随所に散りばめられた残酷描写は、痛みを伝えずただただ人体破壊に力を注ぎ、結果それがコアなファンからコメディに近いと評価された皮肉な作品。
ですが、ただ皮肉だ。それだけで片付けれられない作品になっています。
シリーズを重ねる毎にスーパーヒーローになってゆくブルースキャンベル演じる主人公はホラー映画の主人公にしてカリスマ性を放っています。
それもそのはずブルース・キャンベルとサム・ライミは二人三脚と言っていいくらいのチームワークでこの作品を創り上げ、以降スパイダーマンを含めたあらゆるサム・ライミ作品に出演しています。
志を通ずるものとして主演を務めたブルース・キャンベルの頼りなくも心強い絶妙な魅力が光るシリーズともいえるでしょう。
また、スプラッタ映画の先駆けとも称される今作は、前述でもあるように徹底的な人体破壊シーンが売りとなっています。
■ゾンビではない。悪霊である
どれほど人体破壊を行使しても死ぬことのない今作のクリーチャーはゾンビではありません。
あくまで【悪魔が取りついてしまった人間】なのです。
当時のアメリカンホラーではよくあった悪魔描写は日本人の我々からすると些か恐怖からかけ離れた演出ではありますが、それでもこの映画における憑依された人間の醜悪さは圧巻です。
わけのわからない緑の液体を吐き、よくわからない色の血を噴き出し、世にもおぞましい叫び声で苦しむ悪霊たちはまさに阿鼻叫喚の如く次々と正気の人間を襲います。
彼らは強敵ですが、簡単に手足がもげます。
とてもつい先ほどまで人間だったとは思えない形相と恐ろしさですが、簡単にポンポンと四肢が吹っ飛ぶ描写は気持ち悪さを通り越してむしろ清々しいほどです。
この作品を知っているかそうでないかでスパイダーマンの見方も変わるのではないでしょうか。
とにかく病的なまでに醜悪なクリーチャーはその後のホラー映画に一石を投じたのでした。
■死霊のはらわた2013
死霊のはらわたはその後2が作られ、さらに3が制作されます。
2は1に対するライミ監督のセルフリメイクと言っていい作りでした。
3に至っては何故かブルースが中世ヨーロッパにタイムスリップしてゾンビと戦うといったもはやホラーと呼んでいいのかわからない迷作に仕上がり、こちらも賛否はありますが名作としてファンから愛されています。
その監督が代わり、死霊のはらわたを詠った作品(もはやB級ホラーの出来ですが)は何作か制作されます。
ですがそのどれもが鳴かず飛ばず、特に話題にあがることもなく消えてゆき、一方ライミ監督はホラー以外のジャンルでもその才能の頭角を現してゆきます。
その人気を不動にしたのが、ここまででも何度か名前が挙がっている「スパイダーマン」です。
あの圧倒的な映像魔術に誰もが胸を躍らせたものです。
ですがスパイダーマン1のクライマックスはライミらしさが良く出ているバイオレンス描写だったのではないでしょうか。
おっと話が逸れましたね。
時は流れ、2013年。
映画業界だけにとどまらないリメイクブームの中でついにこの『死霊のはらわた』もリメイクされることになりました。
もうCG使いまくり、悪霊はモンスターじみて、もう原作の面影もない!
……なんていうホラーリメイクが跋扈する中、この2013年版は原作ファンにとっても納得の出来だったのではないでしょうか。
醜悪で嫌悪感を煽るクリーチャーは当時よりももっと凶悪で恐ろしく、そして醜悪さと嫌悪感を煽るその風貌は純粋にあの頃よりもパワーアップしたといっていいでしょう。
端々で迸る血のような黒い体液は、原作のわけのわからない緑や青い血液と同義であり、その醜悪さと汚さを存分に醸し出しています。
脚本は若干現代風にアレンジはされていますが、原作になかった救いの無さが光った名リメイク作といっていいでしょう。
ですが、その出来の良さもそのはず。
今回の2013年版の監督は、なんとサム・ライミ監督が自ら指名した新鋭監督というのです。
至る所に散りばめられた原作へのオマージュやリスペクトが決してホラー映画ファンを裏切らない最高の出来にしたと言っていいでしょう。
なによりも無茶な改変がほぼ(ラスト以外)なかったのもポイントが高いです。
■星はいくつ?
さて、前回のWORLDWARZと比べて比較的褒めちぎってしまった今作。
評価の対象は原作ではなく、新作映画としての2013年版死霊のはらわたにしようと思います。
★★★★☆☆☆☆☆☆
星4つでした!
確かに現代のリメイク映画としては高評価ですが、やはり今観るとどうしても題材が古い。それにリメイクはどこまで行っても所詮リメイクでしかないのです。
それは単に原作を超える、超えないではなく。
新しきが前面に出ない作品はやはり昔の作品の焼き増しでしかなく、一定の評価以上は難しいと思うのです。
例えば、ジャンルは違いますがローンレンジャーのような極端に昔の作品のリメイクならまだしも80年代作品のリメイクは映画としても新し過ぎるからです。
原作のインパクトが強ければ強いほど、その光が翳る前にリメイクをしてしまっては原作の輝きを再認識してしまうばかりなので、やはりリメイクとはいえ大胆なアレンジが必要だったのではないでしょうか。
特に死霊のはらわたの場合、ブルース・キャンベルに絶対的なファンが多く、彼でなくてはダメだという潜在的な感情を持っている人も多いことでしょう。
ただ、おどろしく醜悪なクリーチャーは今作の方が圧倒的に上回っているのかもしれませんね。
脚本のポイントで星をあげられなかった代わりにこの新しく恐ろしい魅せ方に期待します。
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