文明を閉ざした島 / 北センチネル島
■上陸できない島
インド領アンダマン諸島中の島。アンダマン諸島の南西部、南アンダマン島の西、約30キロに位置する。
その島は『北センチネル島』という。
北センチネル島は、物理的に上陸は容易い島である。
だが、この北センチネル島に上陸することは出来ない。
【上陸できない】ことで有名な島なのだ。
上陸するのは容易いのに、【上陸できない】とはどういうことか。
一見、矛盾しているその理由はこの島に住む先住民にある。
■文明が閉ざされた島
ここでこの島にまつわるあるエピソードを紹介しよう。
とある、インド人の男が二人カニ漁のため海に出た。その日は天気も良く、心地のいい日だったので、二人は眠りに落ちた。
しばらく船の上で眠っていた二人は、小さな島に漂着した。
言わずもがな、それが北センチネル島である。
二人はすぐにそこがなんの島であるか気付いた。
現地でも【行ってはいけない島】として有名だったからだ。
慌てて二人は島から離れようと船を出そうとするが、先住民に見つかってしまう。
そして、彼らを見つけた先住民は躊躇することも、威嚇することもなく、矢を放ったのだ。
二人の男は、その矢に射られ死んだ。
インド政府は、二人の遺体を回収しようとヘリで島に近づくも、同じく先住民に地上から矢を放たれ、遺体の回収を断念せざるを得なかった。
この先住民は、ほとんど裸で、……そう、我々がジャングル奥地に住む部族と聞いてイメージする、あのままの姿だ。
腰にはワラのようなものを巻き、なにかの塗料を体に塗りつけて木で作った弓や武器で威嚇する。
現在ではもはやそういった文明から隔離された部族というのは、過去のものとされてきた。
だが、この【北センチネル島】ではそれが今も息づいているのだ。
■文明を拒絶する部族
北センチネル島で暮らす部族たちは、とにかく外界からの侵入を拒んだ。
彼らは、50~400名で生活しており、現代の文明を一切有さない。
また、いかなる理由であっても誰からの侵入も許さず、それがたとえ善意のものであっても容赦なく矢で威嚇するのだ。
実際、2004年にスマトラ沖大地震があり、各地に深刻な被害あった際、この北センチネル島にも救援物資を届けようという動きがあった。
だが、北センチネル島民はそんな物資を援助するヘリに対しても、雨のような矢を放ち一切近づけなかったのである。
結局、上陸できなかったため、この島での地震の影響は不明。
また一方で時折、専門家チームが食べ物や贈り物を持って上陸を試みるも、やはり矢の歓迎を受けた。
■未開の島
こういった失敗を踏まえ、インド政府はついに彼らとの接触を公式に禁じると島の5キロ圏内に侵入することは違法とした。
そうして、政府直々にコンタクトを封じられた北センチネル島の島民たちだが、その生態は謎に包まれている。
彼らの島は謂わばクローズドワールドであり、文明が入ってこないと同じく、文明が外に出る事もない。
確証のないことばかりの中で、いくつか予想されているものの、どれも仮説でしかないのだ。
特に言語は、独特の言葉を話し、世界中のどの言語にも属さない。
その為、専門家でも彼らの言葉を解読することも出来ず、世界でも数少ない【未知の言語】とされている。
未知の言語を話す彼らと接触しなければ、彼らの言葉はいつまで経っても【未知】のままである。地球上の全てを衛星で見下ろせるようになった現代、こういった『時代に取り残された部族』は貴重でもあるのだ。
だが、貴重なだけに滅びる危険性もある。
サバイバル・インターナショナルの発表によれば、この北センチネルの部族はインフルエンザやその他疫病などに対する免疫を持っていないため、「地上最も虚弱な存在」とされているのだ。
数十秒に一種、生物が絶滅しているとされている現代で、彼らもそういったある種の絶滅危惧種と言ってもいいのではないだろうか。
もしも、彼らのごく狭いコミュニティの中で、病……そう、例えインフルエンザであっても。
それが蔓延してしまうと、瞬時にしてセンチネル部族は死に絶えてしまうのだ。
衛星で全てを見下ろせる……と前述したが、それはなにも見透かせるわけではない。
この島はジャングルでおおわれているため、密林の木々に阻まれて彼らの様子を空から確認することが困難なのだ。
その為、ヘリで上空を飛んでもその片鱗しか確認することは叶わない。
仮に強硬手段で、彼らを軍事力で制圧したとする。
そうすれば、彼らの生活は明らかになり、6万年独自に暮らしてきた謎が解明されるだろう。
だが、彼らは島に近づく人間は殺そうとするものの、自ら外へ侵攻しようとすることもない。
要は、『放置していても問題がない』とされ政府の公式な発表もあり、【上陸出来ない島】は【上陸してはいけない島】になったのだ。
……いや、【近づいてはいけない島】が正しいのかもしれない。
我ら日本語で例えるのなら、【触らぬ神に祟りなし】といったところか。
だが文明を持たない彼らこそが、人間の本質なのかもしれないことも否定できないのだ。
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