スリルドライブ / 本当にあった体験談 2/2
■スリルドライブ後編
どうも最東です。
前回の続きということで、Jが鳥肌を全開させた腕を私に見せたところからお話したいと思います。
■語り始めるJ
友人Jは無神論者の心霊否定派。
そんなJがいわくつきのトンネルに差し掛かったところで急に無言になった。
問い詰めるも中々口を開かない彼は、鳥肌で真っ青になった腕を私に見せました。
「な、なんだよ!? どうしたんだこれ!」
トンネルを抜けて実に10分ほどが経っていました。
よほど恐ろしい体験をしたらしく、無言になったのはそれらを整理しつつ自らの心を落ち着かせようと思ったからだったようです。
そして彼はゆっくりと語り始めるのでした。
「あのトンネルに入った時、俺はなんとなくサイドミラーに映る自分の顔を見ていたんだ」
当時、運転していたのは私で、彼は助手席に乗っていました。
しかし運転している車自体は彼の自動車で、自分の車でそれを体験したことが更に彼の不安を煽っていた……と、後に聞きました。
■鏡に映る自分ではない顔
「すぐに不自然なことに気付いた。うっすらと鏡に映る自分の顔にモヤがかかっているように濁っているんだ。
なにかと思ってなんとなくそれをじっと見つめていたら……」
私は彼が急に無口になったタイミングはそこだったのかと納得しました。
私があれこれと世間話をしている最中、彼はそんな奇妙な異変に目を凝らしていたのです。
「だけど、そのモヤはすぐに消えて、結局自分の気のせいかと思った。
そう思いつつ相変わらず鏡に映る自分を見ていたんだけどさ、鏡の外からジジイの横顔がにゅうっと映りこんできたんだ」
Jが話す内容に思わず私も無言で聞き入るしかありませんでした。
Jは独白のようにただ淡々と続けます。
「その顔がゆっくりとサイドミラーの逆側に動き始めて、丁度真ん中くらいでピタッと止まったんだ。
ジジイが止まったのは俺の顔が映ったポイント……。
つまり鏡越しに俺の顔と完全に被った形で、あまりの鮮明さに固まっているとジジイは、
中の俺に振り向き、目が合ったんだ。
そして一瞬ニヤっと笑うと、そのまま顔の向きを正面に直し鏡の外へと消えた」
冗談を言っている雰囲気でないJの話に、どう相槌を打ったらいいのかわからずに、
ただ「うん」だとか「そうなんだ」なんて月並みな言葉しか発せない
友人が恐怖を味わったというのに、気の利いた言葉が言えない自分に苛立ちを覚えはしましたが、
それ以上にたった今自分の隣でアンチ心霊派の彼が体験した話を、
彼自身の言葉で、その口から聞いていることに私自身が恐怖していたのかもしれません。
「それで……考えたんだ」
意外にもJは話を続けました。
「鏡越しに俺の顔と重なったってことはさ……、
それって鏡にジジイが映ったんじゃなくて、
【サイドミラーと俺の間にジジイが立っていた】
ってことじゃないかって……」
つまり彼はこう考えたのです。
鏡に映ったのではなく、実際自分の目の前に走っているはずの車窓越しに至近距離で見詰められたのではないか?
と。
最後に彼は私に「今日は家に泊めてくれ」と小さく肩を震わせて言うのでした。
■それだけでは終わらない……
その後、Jにはある異変が生まれました。
霊や宇宙人などのオカルト・ホラー系の事象に対して否定派だった彼ですが、その日を境になんと霊感体質になってしまったのです。
当然ですが、それまでは霊感などと言うものは微塵も持ち合わせていませんでした。
よく霊能者と呼ばれる人たちが言うのですが、霊が見えるというのはラジオでいう【周波数が合う】のと同じことだそうです。
霊体とその人の周波数が近い数値で合ってしまった時、偶然ではなく必然で目撃するとか……。
運命の人を見つけた時、ビビビと電撃が走る感覚が走る……なんて話は男女間の美談としてよく語られることですが、
もしかしたらそれとごく近いことなのかもしれません。
と、すると彼は一度周波数が合ってしまったが故に、チャンネルが入ったままになってしまった……ということなのでしょうか。
彼の別のエピソードはまた、次の機会にお話ししましょう……。
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