『おるすばん』(角川ホラー文庫刊 2019/9/21発売)
■角川ホラー4冊目
どうも最東です。
角川ホラー文庫での4冊目、自身の著書では実に5冊目の単著。
今回のテーマは『インターホン』と『人形』です。
人形と言えば日本人にとって根源的な恐怖を感じるものではないでしょうか。
昔から『髪が伸びる』、『夜中にすすり泣く』、『夜な夜な徘徊する』など、人形に関する怪異は枚挙に暇がありません。
怪談などでも古くから人形にまつわる怪異譚は語り継がれ、海外映画でも『アナベル』や『チャイルドプレイ』といったホラー映画はいまだに隆盛を誇っています。
……チャイルドプレイはまあ、ちょっと違いますが。(パペットマスター枠)
そこで私もついに手をだしてしまいました『人形もの』。ですが、最東ホラーが普通の人形ものを書くわけがありません。
■ピンポン
これまでの角川ホラー文庫シリーズで出版した著作は三作。
『夜葬』はスマホのナビ、メッセージアプリがキーになりました。
『#拡散忌望』はTwitter、『えじきしょんを呼んではいけない』は音声検索と画像SNS……
御覧の通り、スマホをはじめとしたインターネット時代の文明の利器をふんだんに使ってきました。
光文社刊『怨霊診断』においては動画配信者、いわゆるYouTuberを題材にし、毎作品切っても切り離せない関係でしたが、今作『おるすばん』ではそれらがキーではありません。
タイトルが『おるすばん』であるように、『ひとりで家にいる』ことがキーになっています。
しかも、今回の怪異は律義にインターホンを押してやってくる。決してドアを開けてはいけません。
もしも開けると――
■死と死でないもの
最東ホラーでは怪異に襲われる者たちが簡単に死ねません。
脳みそ空っぽで生きていたり、顔をくりぬかれても生きていたり、跡形もなく溶かされて行方不明扱いになったり、様々です。
今作はそれらよりはっきりと怪異に襲われた人間は命ではない“ナニカ”を奪われます。
それは右腕か、左腕か、右の足か左の足か。
四肢のどれかを奪い、奪われた人間は失くなってしまったそれと共に生きていかねばならない。
はた目にはそれが怪異によって奪われたものだなんてだれも思わないでしょう。
だがその人だけが知っている、自分の“失い部分”の真相。
これこそが今作の恐怖の根源。
眠って見る悪夢と起きても続く悪夢。これが大きなテーマとして書きました。
■表紙カバー造形は山下昇平氏
今作は初めて、造形師による表紙カバーを採用していただきました。
担当してくださったのは山下昇平氏。
怪談誌『幽』や『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ、京極夏彦/著『虚実妖怪百物語』や黒史郎/著『獣王』など、ここに書ききれないほどのホラー作品に関わっておられる造形作家です。
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今作を読んでいただいた上で、実に妖しく美しく、そして最高に気味が悪い造形を仕上げてくださいました。
そして、今作の表紙にはさまざまな秘密が込められています。
それは――読んでからのお楽しみ、ということで。
とにかく、最後まで読んだあとで表紙カバーを見ていただくと『込められた意味』がわかるはずです。
ホラー小説家である私にとって、山下氏にカバーを担当していただけるというのはひとつの目標であり、憧れでした。
作家生活3周年を目前にそれが叶い、本当に嬉しいと共に身が引き締まる思いです。
願わくは、今作を読んだ読者の心に忘れられない穢れとなりますように。
■ドロボーとキムラサン
さて、最東作品を追いかけてくださっている読者さまはひとつ気になっている点があるかと思います。
『今度のクリーチャーはなんじゃらほい』
最東ホラー作品には、その物語を象徴するクリーチャー(怪異)が登場します。
『夜葬』のどんぶりさん、『#拡散忌望』のMW779、『えじきしょんを呼んではいけない』の硫酸かけかけマン……
今回ももちろん登場しますよ!
『おるすばん』では、【ドロボー】が登場します。
しかし、またの名を【キムラサン】とも……
このふたつのキャラの因果関係は。そもそも同じ存在なのか。さてさて、それはぜひお手に取ってご自身でご確認ください。
今回の【ドロボー】は体のどこかがありません。
チャイムを鳴らし、中から招き入れられると自分に足りない部分を生きている人間から奪うのです。
つまり、四肢を“盗む”から【ドロボー】。やだなあ、怖いな怖いなあ。
毎回、最東ホラーには【やってはいけない条件】があり、それをすると怪異が発動するというシークエンスになっていますが、もちろんその辺もちゃんと踏襲しています。
■追い求める理不尽感
とにかく理不尽に。だけどルールには則って。
毎度毎度、この点には頭を悩ませています。
身近なツールでなにげにやりがちなこと。それが呪いのトリガーである。
そうするとやはりインターネットやSNS、スマホやアプリになってしまいがちです。
事実、そういったツールを扱ってこれまでの三作品は作ってきました。
そうではなく、もっと普遍的で時代に左右されない“理不尽さ”を追求した結果、今回のテーマに辿り着いたのです。
言うまでもないですが、これが【終着点】ではなく【通過点】であり最東作品のいち作品以上でも以下でもありません。
これはひとつの可能性。
「あいつ(最東)の書くやつみんな一緒じゃん」って言われてもかまわないので、とにかくこの路線は追及していこうと思います。
そして、現時点でこの作品はそういう意味でもかなり出来がいいのではないかと自負しております。
是非、お手に取って最後までお付き合いいただければ。
最東対地
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