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おうちゴハン

おうちゴハン

 

■その人、本当に知っている人ですか?

「妻が別人とすり替わっているかもしれない」 

とある探偵社を訪れた田中豊は意を決してそう話した。 
だが探偵は鼻を鳴らして笑うのみで凡そ豊の言うことを真剣に聞いている様子ではない。 

豊自身もそんなことは承知の上であった。 

《妻が別人とすり替わっている》としたら夫である豊がそれに気付かないはずがない。 
だが現実問題として豊はこうして妻の調査を依頼しに探偵社へやってきたのだ。 

「奥さんが入れ替わってる……って、ねぇ?」 

更に鼻を豚のように鳴らして豊を嘲笑の的にしながら探偵はねっとりとした視線を豊に投げかける。 

探偵のいうことは尤もだが、豊が自分の妻を妻だと断定できないのには理由があった。 

――不倫。 

過去に起こしたその過ちのせいで彼ら夫婦はすっかり冷え切っており、お互いの顔を見ることすらここ数年なかったからだ。 

そして追い打ちをかけるように豊の2年間にも及ぶ単身赴任……。 

理解しがたい案件ではあるが、豊にとって妻の顔を曖昧にさせるには十分な時間だったのだ。 

豊は続ける。 

「料理が苦手で、特に肉が大の苦手だったはずの妻が家に帰ると毎日肉料理を振る舞ってくれるんです。それがまた絶品で、家に帰るのが楽しみになりました」 

「なんですかい? 結局のろけですかい」 

「違います。料理を作るだけなんです。料理を作ってすぐに部屋に戻って出てこなくなる……。それに職場もやめてしまっているみたいだし……どうか調べてください! 
 あいつがあいつだという自信が欲しいんです」 

探偵はあまりに熱のこもった豊の弁に溜め息と混じったタバコの煙を吐き出し、奥のデスクから黄ばんだ誓約書と契約書を持ち出してきた。 

「それじゃ……ここに署名をお願いしますよ……ひぇっひぇっ」 



『めろん。』、『実況板』に続く待望の不快系ホラー第3弾。 

貴方の隣に居る人は、本当に貴方がよく知る人物ですか? 

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公開日:
最終更新日:2014/09/01

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